革の世界
環境と人にやさしい防水レザー「ステアガードⅡ」
革の世界
皆様、こんにちは!
以前にNOTE(読み物)でご紹介しました、革の魅力をお届けするラジオ番組『ジャパンレザーヴォイス〜レザーがある、ちょっと素敵な生活〜』はお聴きいただけましたでしょうか?
まだお聴きでない方は、ぜひこちらの記事から番組の様子をご覧いただけると嬉しいです。
さて、そのラジオ番組内でもご紹介いただいた、私たちの新しい挑戦から生まれた素材「ステアガードⅡ」。今回は、この新しい防水レザーについて、詳しくご紹介したいと思います。
革製品の魅力は、なんといってもその風合いや経年変化、そして天然素材ならではの「呼吸する」かのような通気性です。しかし、多くの方が経験するように、革は水に弱いという弱点も持っています。
雨の日に革靴を履いていたらシミになってしまった…
お気に入りの革のバッグが濡れて硬くなってしまった…
そんな経験から、革製品との付き合いをためらっている方も多いのではないでしょうか。
私たち山陽は、そんな革の弱点を克服し、もっと気軽に、もっと自由に革製品を楽しんでいただきたいという想いから、機能性レザーの開発に力を注いできました。その最新の答えの一つが、今回ご紹介する「ステアガードⅡ」です。
「ステアガードⅡ」は、革本来の自然な風合いや通気性を一切損なうことなく、高い防水性を実現した画期的なレザーです。
その秘密は、革の繊維一本一本に、特殊な防水剤を丁寧に染み込ませる独自の技術にあります。革の表面をコーティングで覆うのではなく、繊維レベルで防水加工を施すため、革が持つ「呼吸」を妨げません。これにより、雨などの水はしっかりと防ぎながら、内側の湿気は外に逃がすことができるのです。
この「透湿防水性」は、特に靴やバッグ、衣料品といったアイテムにおいて大きなメリットを発揮します。長時間身につけていても蒸れにくく、快適な状態を保つことができる。天候を気にせず、いつでもお気に入りの革製品と過ごせる毎日。それが「ステアガードⅡ」が目指した世界です。
そして、私たちが防水性と同じくらい大切にしたのが「安全性」です。
「ステアガードⅡ」の大きな特徴は、防水加工に有機フッ素化合物(PFAS)を一切使用していない「フッ素フリー」であるという点です。
PFASは、撥水性や撥油性に優れていることから、これまで衣料品や調理器具のコーティングなど、様々な分野で広く利用されてきました。しかし近年、その一部が自然界で分解されにくく、環境や人体に長く残留する可能性が指摘されるようになり、世界的にその使用を規制する動きが加速しています。
革をつくるタンナーとして、そして地球環境の中で事業を営む一企業として、この問題から目を背けることはできません。未来の環境、そして革製品を手に取ってくださる皆様の健康を守る責任がある。その想いから、私たちはPFASを使わない防水レザーの開発にいち早く着手しました。
もちろん、その道のりは平坦ではありませんでした。フッ素系の防水剤が持つ高い性能を、別の方法でいかにして実現するか。何度も試作を繰り返し、私たちはついにフッ素系に匹敵する優れた防水性を持つフッ素フリー防水剤と加工技術を確立しました。
正直にお話しすると、現在のフッ素フリー技術には、まだ発展の余地も残されています。例えば、油性の汚れに対する「防汚性」においては、従来のフッ素系加工に一歩及ばない面があることも事実です。
しかし、私たちはこれを単なる課題とは捉えていません。これは、さらなる高みを目指すための、新たな挑戦の始まりだと考えています。安全性と機能性をどちらも諦めない。環境への配慮と、ユーザーの満足度を最高レベルで両立させる。その目標に向かって、私たちはこれからも製品開発を続けていきます。この前向きな挑戦こそが、山陽のDNAです。
「ステアガードⅡ」の安全性と環境配慮を客観的に証明するものとして、「日本エコレザー」認定の取得があります。
「日本エコレザー」とは、NPO法人日本皮革技術協会と一般社団法人日本タンナーズ協会の下で基準を制定され、2009年から一般社団法人 日本皮革産業連合会がその認定業務を運営する認証制度です。製品の製造から輸送、販売、消費、再利用、廃棄に至るまで、環境への影響が少ないと認められた革だけが、この認定を受けることができます。
そして特筆すべきは、この認定基準が2024年に大きく改定され、より一層厳格なものになったという点です。
今回の改定の大きなポイントは、まさに先ほどご説明したPFAS(有機フッ素化合物)に関して不使用の宣言を必須とするなど、化学物質の管理基準が世界基準に合わせて大幅に引き上げられました。
「ステアガードⅡ」は、この新しい、世界で最も厳しいレベルとも言える基準の中でも最も高いランクである「ゴールド」(※)をクリアして認定を取得しています。これは、私たちが目指してきた「環境と人へのやさしさ」が、公的な基準によって認められた証であり、皆様に安心してお使いいただける製品であることの何よりの証明だと自負しています。
(※)日本エコレザー基準(JEL基準)の「ゴールド」は、以前には「エキストラ」という名称になっていました。3歳未満の乳幼児の肌にも優しいものであるという厳しい基準になっています。
私たち株式会社山陽は、創業以来、常に革の新たな可能性を追求してきました。今回ご紹介した「ステアガードⅡ」も、その長い挑戦の歴史から生まれた、大切な成果の一つです。
「革だから、これはできない」
そんな常識や固定観念を、私たちの技術と情熱で乗り越えていきたい。
環境を守りながら、人々の暮らしを豊かにする、心躍るようなレザーを生み出していきたい。
その想いを胸に、私たちはこれからも歩み続けます。
機能性革の可能性は、まだまだ無限に広がっているはずです。
環境と安全、そして革本来の魅力を高次元で融合させた「ステアガードⅡ」。
この新しいレザーが、皆様の暮らしに寄り添い、革との付き合い方をより素敵なものに変えるきっかけとなれたら、これほど嬉しいことはありません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、また次回に。
ステアガードⅡの日本エコレザー認定の詳細については、以下のページをご覧ください。
https://ecoleather.jlia.or.jp/data/detail.php?id=1343
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