株式会社山陽

 

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ボックスカーフ ~革素材の最高峰~

皆さんは、「“最高の革”は何ですか?」と聞かれたら、どのように答えられるでしょうか?

希少価値の高いエキゾチック・レザー、その中でも特に貴重な「ワニ革(クロコダイル・レザー)」と言われる方、「革のダイヤモンド」とも称される「コードバン(馬のお尻部分の革)」を挙げられる方、または厳選した天然素材だけを使った「本ヌメ革」や古式ゆかしい製法で作られた「姫路白鞣し革」を選ばれる方もいらっしゃると思います。
もちろん人それぞれ、「最高」と思われる素材があると思いますし、先ほど上がった革は「最高」という呼称にふさわしい素材だと思います。
今回は、近代的な革のなめし製法である「クロムなめし」が発明された後、最高峰の素材として作られた「ボックスカーフ」についてお話したいと思います。

「ボックスカーフ」は、世界的に有名なファッションブランド「エルメス」において、「ワニ革(エキゾチック・レザー)」を除くと最高級の素材に位置付けられています。
まず素材は、生まれて3カ月から6カ月の仔牛の皮を使った「カーフ」(※)を使用しています。なめし方法は、「クロムなめし」によって鞣されています。この時点で、非常に繊維が緻密で柔らかい革になっていると想像頂けると思います。

(※)現在、品質の良い革や食肉を得るために仔牛の時期に屠畜(とちく)することはありません。死産で生まれた仔牛や身体に障害(骨格が変形して生まれてしまった等)があり長くは生きられない牛の原皮を使っています。

そこから、円柱状のガラスや金属のような固い素材を、革表面(銀面)に擦り付けて磨き上げていきます。この工程をグレージングといいます。

グレージングすることにより、表面は革本来の風合い(銀面の風合い)を持ちつつ、豊かな光沢感が出てきます。「高級バック」に使われている上品にピカッと光った革を思い浮かべて頂くと良いかもしれません。
但し、この製法は、非常に手間ひまが掛かるだけでなく、革に浸透させる薬剤(バインダー)にカゼインなどのたんぱく質由来の薬剤を絶妙な配合で使い、磨く技術においても熟練の職人技が必要です。(※通常の革の浸透剤にはアクリル系の薬剤を使うのですが、アクリル系の薬剤は熱で溶けてしまう性質があり使えません。そのため熱によって固まる性質があるたんぱく質由来の薬剤が使われるのです。)

このボックスカーフを世に知らしめたのは、1849年にドイツで創業した名門タンナー「カールフロイデンベルグ(Carl Freudenberg)」でした。その当時、日本にも輸入されており、「本銀判ボックス」や「ドイツ製のボックス革」として非常に珍重されていたそうです。

ちなみに何故「ボックス」と言われているのかは、諸説ありますが、以下の3つの説が有力です。

①高級な革なので紙で巻くのではなく箱に入れて納品されていたから
②ヴィクトリア女王時代の王室御用達靴店ジョセフ・ボックス(Joseph Box)が好んでつかっていたから
③この革を多く製造していた業者が革の裏面に押していたスタンプの形状から来た

また日本でも大正時代ごろからこの「ボックスカーフ」の製造が行われるようになったと言われています。しかし生産できるタンナー(製革業者)は、世界的に見ても少なく、もちろん日本でもその技術を持っているタンナーは希少と言えると思います。

当社でも大正時代から製造が行われ、大正末期にはドイツ製のボックスカーフと並び称されるようになっていたと言われています。
現在の山陽においても、その希少な技術は受け継がれており、数こそは多くありませんが今でも作られています。
いつか皆様に、山陽製ボックスカーフをお使いいただけましたら幸いです。

それでは、本日はここまで。

また次回に。

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