革の世界
皮革におけるJIS規格 (2) ~革と皮~
革の世界
山陽の読み物(NOTE)をご覧頂きましてありがとうございます。
前回に引き続きJISをテーマに革・レザーの事を取り上げて行きたいと思います。
今回のテーマは、「革と皮」です。新年度を迎える前に初心に立ち返ってみましょう。
実は、私自身このテーマをまつわる印象深い出来事があります。
3年前に、とある皮革技術についての勉強会に参加した際のエピソードなのですが、その時の講師の方が、松任谷由美さんの名曲『卒業写真』をテーマに「革と皮」について解説されていました。
『卒業写真』の冒頭部分の歌詞に ~皮の表紙~ という言葉があります。
この「皮」は、製革関係者の目から解釈すれば「革」ではないかと。
私たち山陽も、この読み物の中で「皮と革」の違いについて取りあげてまいりました。
(例えば、こちら「皮から革へ」をご覧ください)
端的に言えば、「なめし」という加工を行う前は「皮」、行った後は「革」と呼ばれています。
この点について、JIS規格(JIS K6541:2024)を紐解いてみると
【皮】 3.1.3 動物の体の表面を覆う器官 |
【革】 3.1.1 皮本来の繊維構造をほぼ保ち、腐敗しないようになめした動物の皮 |
とされています。
やはり
皮 = 生の状態(なめされていない)
革 = なめされた状態
と定められています。
またここでお話ししている「なめし」についても、以下のようにJISで定められています。
【なめし】 3.2.1 皮の繊維構造を保持したまま、植物タンニン、化学物質などで処理することによって安定化すること (注釈1)主な目的は、耐熱性を付与すること、微生物及び化学薬品に対する抵抗性を付与すること、柔軟性、特有の感触、吸放湿性、耐湿性、耐久性など必要な物性を付与し又は革らしさを与えることである。 |
とされています。
このように「皮」は「革」になることで長期間の使用に耐えうる性質や独特の触感を得ることができるのです。
実は、私たちタンナーが工場見学時などに受ける質問に必ずと言って良いほど、「皮」と「革」の違いがあります。
その度に「革は身近な素材」とは言いながら、なかなかその違いを多くの皆さんに知ってもらうのには難しく、だからこそ私たちタンナーが丁寧にお伝えしていく必要があると感じています。
最初に取り上げました「卒業写真」の歌詞につきましても、私たち革を扱う者からのPR不足を感じるばかりです・・
ですので、今回この読み物(NOTE)をご覧頂きました皆様には、ぜひ「皮と革」の違いについて、改めてご認識頂けましたら幸いでございます。
3月の半ばを過ぎて、まさに卒業シーズンです。
幼稚園、小学校、中学校、高校、大学などを卒業されて新たなステージに巣立つという、嬉しくもあり、一抹の寂しさも感じるセレモニー。
ぜひ「革の表紙」のアルバムに、その思い出を残していただければと思います。
本日はここまで。
また次回に。
追記:革について詳しくなりたい方に、おまけ情報
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