山陽Letter
【山陽レザー】#006 アーマー(グローブひも用革) ~「切れない革」を目指して
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山陽の読み物をお読みいただきましてありがとうございます。
今回から3回にかけて、シリーズ「社長に聞く」のVol.3をお送りします。
これまで、「レザーとサステナブルの関係」「タンナーの環境への取り組み」と題して革が生まれ使われて来た背景、私たちタンナーが生産していく上で環境との調和という視点からご紹介してきました。いかがでしたでしょうか。
Vol.3では、「“レザー”を取り巻く環境」と題しまして、近年開発された“新素材”とレザーに焦点をあてて山陽の社長、戸田に聞いていきます。お楽しみください。
まず大きな分類としてですが、私たちが作っている革(本革)が天然素材であることに対して、合成皮革および人工皮革ともに合成素材です。
つまり石油を原料として人工的に作られたものと言えます。その歴史は1930年頃が最初と言われ、この時に作られたものは「塩ビレザー」と呼ばれていました。その後、1950年代に入り合成皮革が開発されました。
合成皮革は下の図のように表面の層を主にポリウレタン樹脂で作られています。その下は編物層と言われ、編物や織物となっています。
次に人工皮革ですが、1965年のアメリカ デュポン社の「ファルコム」が世界初の人工皮革と言われています。その後にクラレ(倉敷レイヨン)の「クラリーノ」や東レの「エクセーヌ」といった素材が生み出されています。合成皮革と比較すると表面樹脂層はポリウレタン樹脂という点は変わりませんが、ベース層が不織布層になりポリエステルやナイロンの立体的な織合わせになっています。(下図)
いずれも言えることは、「革」の構造を研究し作られており、構造は似ています。
しかし合成素材としての耐久性の限界(加水分解が発生する等)はあります。また顔料を表面に塗布した革への類似は進んでいますが、革の特徴である表面(銀面)を活かした「銀付き革」への類似は難しいように感じます。
確かに、昨今○○レザーという言葉をよく聞きます。(例えば、ヴィーガンレザーやフェイクレザーなど)
しかしそれらがどういったものかという区別があいまいで理解し難いようになっているように思われます。
私が知る限りを表にまとめてみますと以下の様になると思います。
天然皮革 | 石油由来 | 植物由来(一部含む) | |||
---|---|---|---|---|---|
本革 | 合成皮革 | 人工皮革 | コーティングに植物由来物質を使用 | 生地に植物由来物質を使用 | |
主原料 | 動物の皮 | ポリウレタン樹脂
塩化ビニル樹脂 ポリエステル など |
表面に植物性樹脂を使用。素地はポリエステル・ナイロンなどを使用 | 素地に植物から採取した繊維を使用。
コーティングはポリウレタン樹脂等を使用。 |
|
寿命 | 長い (メンテナンスをすることで10年以上使用可能) |
短い | やや短い (合成皮革よりも長いが、本革と比べ短い) |
現時点では不明 | |
特徴 | 使い続けることで革特有の風合いが出る。(経年変化) | 安価である。大量生産できる。 | 合成皮革よりも革に近い。厚手にも対応。 | 石油由来の原料の低減を目指す。 |
合成皮革・人工皮革に加えて、植物性の繊維から生地(ベース)を作ったもの、植物性樹脂を使って表面をコーティングしたものが増え、これらが昨今の○○レザーと呼ばれるようになっていると感じます。また以前から存在した合成皮革・人工皮革も含めて○○レザーと呼ばれるといった解釈をされている場合もあり、私も消費者の立場に立った際には誤解してしまいそうになることがあります。
こちらの読み物をご覧頂きました方々におかれましては、ぜひ構造や原料による分類をご理解頂けましたらと思います。
これまでお話ししましたように、私たち山陽がつくっている革は食肉の副産物として動物から頂いた原皮という天然素材から作られているという点で、他の素材とは全く違うものと言えます。
また生物が何億年もかけて地球環境に適応するように進化し生み出されて来た構造は、やはり人知を超えた素晴らしい点があると感じています。
しかし20世紀後半の技術革新には目を見張る点があることも事実です。天然素材である本革においても、環境に配慮しながら近年の技術も積極的に取り入れ革新し続けています。
次回は、今回ご紹介した様々な新素材がある“今”について、もう少し考えを進めていきましょう。
いかがでしたでしょうか。
次回は、社長に聞く「タンナーの環境への取り組み②」をお届けする予定です。
また戸田社長はインスタグラム(https://www.instagram.com/sanyo_toda/)でも、定期的にご自身の発信を行っています。
ぜひこちらもご覧ください。
では、また次回に。
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