山陽Letter
【山陽レザー】#006 アーマー(グローブひも用革) ~「切れない革」を目指して
革の世界
こんにちは。
山陽の読み物をご覧頂きありがとうございます。
今回は、「アドバンレザー」「アドバン加工のレザー」をご紹介したいと思います。
皆さんも上の写真のようなベースとなる色から部分的に別の色が浮き出ているような美しいグラデーションを持つ革で作られた靴やカバンなどを目にされたことがあるのではないでしょうか。
このように別の色が浮き出てくるような仕上げをしている革を「アドバンレザー」「アドバン加工のレザー」と呼んでいます。
この「アドバン」という言葉ですが、正式には「アドバンティック(Advantique)」という言葉の略称として使われているようです。
※正式には「アドバンティックレザー」「アドバンティック仕上げ」という表現になります。
しかしアドバンやアドバンティックという名称は、日本での呼び名で、海外では一般的に、「ブラシュオフ(Brush-off)」や「ウォッシュオフ(Wash-off)」という言葉が使われ、「ブラッシュオフ レザー」・「ブラッシュオフ仕上げ」や「ウォッシュオフ レザー」・「ウォッシュオフ仕上げ」と言われます。
このように言われる由来として、浮き出ている色を出すのに、主にブラシで革の表面を擦るという加工を行うためにこのように呼ばれています。(場合によっては水分を含んだ布やフェルトで擦る事があり、ウォッシュオフと言われます。)
実は、アドバンレザーは、塗装が2色、場合によって3色の異なる色の重ね合わせ構造になっています。(多くの場合は、アンティーク感を効果的に出すために、表面の色は濃い色で、内部の色は薄い色になっていることが多いです。)
生産方法は、最初にガラスレザーと同様の方法で下層となる塗装を行います。(ガラスレザーについて、詳しくはこちらへ)
その後、上層となる塗装(トップコート)を別の色で行い、ツートン(3色の場合はスリートーン)となるように仕上げていきます。上層の塗装には、主に硝化綿カラー液が使われています。
このように仕上げられた革の表面を、ワックスを付けた布やフェルトで擦る(フェルトバフ)という加工を行うと、表面の色が剝がされて内部の色が浮き上がってきます。
(1)フェルトバフを行う前の革
(2)フェルトバフ
(3)バフかけの様子
(4)フェルトバフ後の革
この現象を効果的に使い、仕上げられた革製品(靴やカバンなど)は、独特のアンティーク感を持ったものになります。
このアドバンレザーは、数十年前から使われている革なのですが、最近になって再評価されてきている革の一つだと感じています。
日本最大級のレザーの展示会「東京レザーフェア」にて行われている革のコンテスト「極めのいち素材」で、第105回(2023年5月開催)の一位に選ばれた革もこのアドバンレザーでした。(東京レザーフェアの「極めのいち素材」について、詳しくはこちらをご覧ください。)
昭和レトロ、平成レトロというブームも相まっての効果かもしれませんが、これまで培ってきた技術が着目され、新たなセンスで今のファッションを彩っていくのはとてもうれしいことだと感じています。
アドバンレザーは、様々な色に展開できる、まさに「色変わりの革」です。
まだ使ったことのないメーカー様やクリエイター様には試して頂けたらと思います。
山陽でも今回ご紹介しましたアドバンレザーを作っています。
アドバンレザーにご興味を持たれた方は、こちらのお問合せフォームからご一報ください。
ご相談からでも結構です。
それでは、また次回も革のお話しでお会いしましょう。
追記
「アドバンレザー」は日本での呼び名ですが、この「アドバン」という言葉は、英語の「advance」から取られたように思われます。
「advance」の一般的には「前進する」いった意味で訳されますが、「色が浮き出す」という意味も持っています。
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