山陽Letter
【山陽レザー】#006 アーマー(グローブひも用革) ~「切れない革」を目指して
革の世界
今回は、「レザーはどんな動物の革?」の2回目です。
もし前回の「レザーはどんな動物の革?(1)」をご覧になっていない場合は、よろしければこちらをご覧ください。
2回目は、お目にかかることがあまり無い、少し変わった革「エキゾチックレザー」をご紹介します。
「エキゾチック」とは、「風変わりで、奇妙であるさま」という意味で、エキゾチックレザーはとても個性的で、独特の印象がある革が多いです。
では、ご紹介していきましょう。
爬虫類の皮革の中で代表的な革です。「ワニ革」というと耳にされたことがあると思います。
ワニ革としては大きく3つの種類が使われています。クロコダイル・アリゲーター・カイマンです。ワニ革はどれも希少性が高い革ですが、中でもクロコダイルで模様が小さな革は非常に高価で高級ブランドバックに使われています。
腹部の四角形と横腹の丸く細かい独特の美しいうろこ模様(ハラワニ)が特徴的ですが、背中側のごつごつとしたワイルドな部分を生かした革も非常に魅力的です。
【主な利用用途】財布、バッグ、ベルト、時計バンド
羽毛を抜いた後の丸みのある突起した軸痕(クイルマーク)が特徴的な皮革です。柔軟性もあり強くて丈夫。クイルマークは全体の約40%の面積しかなく、希少で高級な素材です。
また足の部分も皮革素材として使用されており「オーストレッグ」と呼ばれています。ワニやトカゲのような爬虫類革を思わせる独特の印象を持つインパクトが強い革です。(好みがわかれる革なので意外に安価に手に入る場合もあります。)
【主な利用用途】財布、バッグ、くつなど ※オーストレッグは、革小物に使われることが多いです。
リザード・レザーとも言われています。ワニ革の模様のようなうろこ模様を持っていますが、もっと小さく美しく整然と並んでいる粒状(背中側は丸い粒・腹側は四角い腑)が特徴的です。
トカゲ革に使われている種の代表格がミズオオトカゲ(リングマークトカゲ)で、背中に“輪”状および“点”状の斑紋が並んでいます。爬虫類皮革の中では、ポピュラーな素材として人気があります。強さや触感・艶感などに優れていますが、ワニ革に比べて安価な素材です。
【主な利用用途】財布など小物類、時計バンド、ハンドバッグ、ベルト
ヘビ革の特徴は、独特の斑紋やうろこ模様です。ヘビ革として使われる種はダイヤ形の連続的な模様のあるダイヤモンドパイソン、不規則な図形模様があるモラレスパイソンなどです。日本では縁起がいい革とされて、財布用に使われることも多いです。ただ、これまでに挙げたワニ革・オーストリッチ革・トカゲ革以上に好みがわかれる革です。(好きな方は、ほんとに好んで使われます。)また革が薄くあまり強度が無いので、裏に他の革を貼って補強して使う事が多いです。個人的には、他の革とのコンビやワンポイントで使うことで製品・作品にインパクトを入れるのが良いように思います。
【主な利用用途】財布、小物類、ベルト、ハンドバッグなど
シャークスキンとも呼ばれています。サメの皮は鮫肌とも言われている楯麟(じゅんりん)という硬い表皮(真皮から突出した象牙質をエナメル質が覆った層)があり、塩酸で脱麟(だつりん)処理を行い、楯麟を取り除いた後、柔らかくしてなめして仕上げます。表面の特徴は頭から尻尾に向けて細かい連続した網目状の凸凹があります。大型の種になると網目状の模様が大きくなります。ちなみに楯麟の層の硬いツブツブを活かしてわさびのおろし金として使われたりもしています。
【主な利用用途】財布など小物類
スティングレーとも呼ばれます。小さな粒状の鱗に覆われています(成分としてはサメの楯麟と同じものだそうです)。これがビーズの様に輝きとても美しい表情を見せる革で、「革の宝石」と呼ばれることもあるようです。とくに背部の中ほどには真珠様の“石”が並びユニークな特徴となっています。古来より珍重されてきた革で、刀剣の柄(つか)や胴の素材として愛用されている素材で、今でも装飾的な高級品として取り扱われています。
【主な利用用途】財布など小物類、時計バンド、ハンドバッグ、高級家具など(かつては刀の柄などの装飾品としても使用)
シールスキンと呼ばれています。毛皮あるいは脱毛し皮革として利用されています。アザラシやオットセイのような海獣の革は厚みがあり丈夫で頭部から尾部に向けてある独特の波状の畝模様(うねもよう)が特徴となっています。ほかのどの動物の革とも違う唯一無二の印象がある革です。
(流通量は多くないのか、今回上げた14種類の革のうち、シールスキンだけは現物を見たことがありません。)
【主な利用用途】衣類、バッグ、財布、靴など
冒頭にもお話ししたように、上記の14種類の動物以外にも以下のような革が作られ使われたりしています。
「ラクダ」「うなぎ」「象」「カメ」「カエル」など
ここまで2回にわたってシリーズでご紹介してきました「レザーはどんな動物の革?」ですが、最後に一点お話しさせてください。
現在使われている革の「原皮」のほとんどは、人間の食生活や、人とともに労働し生涯を終えた動物、人の生活を守るために仕方なく駆除せざるを得なかった動物の副産物です。現在ではワシントン条約(CITES:「絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」)で絶滅が危惧される動物の商取引は厳しく規制されており、各国においても野生動物の狩猟は規制されてきています。
人間は動植物の命を頂きながらでなければ、生きていけない存在であることは変えようが無い事実です。であれば、折角頂いた命に感謝してしっかりと「生かして」いくことが大切なことだと考えます。皮革を生産し、皆さんの生活の中で使って頂くことも「命を生かすこと」だと私たちは考えています。
また皮革は、人の力だけで作ることができない優れた素材で、生活を豊かにしてくれ、長い期間使うことができます。
今回の記事から、そのルーツを知って頂くことで、以前よりも慈しみの気持ちをもって革製品を使って頂けましたらうれしいです。
では、また次回に。
<参考資料:レザーソムリエ公式テキスト(日本革類卸売事業協同組合 発行)>
※レザーソムリエについてはこちらをご参照ください。
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