山陽Letter
【山陽レザー】#006 アーマー(グローブひも用革) ~「切れない革」を目指して
革の世界
前回、前々回と「タンニンなめし」という革の製法について、お話してきました。
(まだ読まれていない方は、よろしければこちらから「タンニンなめしとは(1)」「タンニンなめしとは(2)」をご覧ください。)
タンニンなめしは、植物に含まれている「タンニン」で革をなめすという古くから行われてきた伝統的な「なめし方法」でした。
今回から2回に分けてお話しするのは「クロム鞣剤」という薬剤を使う「クロムなめし」というなめし方法です。
第1回目は、クロムなめしが開発されたきっかけについてご説明します。
従来から行われていた「タンニンなめし」には大きな課題がありました。
それは、製作に大変時間がかかることです。
「タンニンなめし」は、「タンニン剤」を溶かした液に1ヶ月程度漬け込まないといけなく、大量生産ができませんでした。
産業革命以降、欧米では近代化とともに日用品や軍需品などに「強い素材」を必要としたのか、新しい革のなめし方法が開発されるようになりました。その結果できたのが「クロムなめし」です。
クロムなめしは、最初1858年のドイツのナップ氏(Knapp)により発見されました。この時点では、まだ実験室で行われる段階で、工場生産できるようなものではありませんでした。その後、1884年にアメリカのシュルツ氏(Schultz)により「二浴法」(2種類の鞣し剤にひたす方法)というクロムなめし方法が発明されました。しかし二浴法は、強酸に溶かした毒性の強い6価クロムを使用する大変危険なものでした。その課題を改良し、塩基性硫酸クロムを使って一つのドラムだけでなめす方法「一浴法」が、1893年アメリカのデニス氏(Dennis)により発明されました。
この大発明によってクロムなめしが世界中に広まりました。
クロムなめしで生産された革は、タンニンなめしの革に比べて弾力性があり、柔らか・滑らかで耐熱性(100℃超)や保存性、染色性も高いという特徴がありました。加えて1日で大量の革をなめすことが出来るため、製作コストの低減にもつながりました。
当時は、特に強い素材を求められる軍需産業からの需要もあり、クロム鞣しは世界中のタンナーで行われるようになりました。
(日本でも日本皮革さん、明治製革さん、山陽皮革(当社)などで始められました。)
革の歴史の中でクロムなめし革が使われるようになったのは、ここ100年ほどなのですが、現在では、革の生産量の約80%がクロムなめしで作られています。
それでは、今日はここまで。
次回は、クロムなめしの工程について説明します。
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