山陽Letter
“本物” について考えてみる ~本革と言われるのはなぜ?
革の世界
前回の「クロムなめしとは(1)~クロムなめし発明のきっかけ~」では、クロムなめし革が開発されたきっかけや流れをお話しました。(まだ読まれていない方は、よろしければ「クロムなめしとは(1)~クロムなめし発明のきっかけ~」をご覧ください。)
今回は、山陽で行っているクロムなめしの工程をお話します。
まず、なめしを行う準備を行います。
① 脱毛 (石灰水に漬けて毛を取り除きます)
② 石灰の除去 (脱毛で使った石灰成分を取り除きます)
③ 浸酸 (皮を硫酸や塩酸などに漬けて、酸性にしていきます)
「浸酸」の工程で皮を酸性にするのは、なめし工程で使用するクロム鞣剤(じゅうざい)の浸透しやすくするために行います。
ここまでの準備を終えた後に「なめし」を行います。
山陽では、直径4メートル、長さ4メートルもある大きなタイコ(またはドラム)と呼ばれる設備に、原皮となめし剤を入れて、12時間程度、攪拌(かくはん)します。ちょうどドラム式洗濯機で、衣服と洗剤をいれ洗濯するようなイメージを持って頂くと良いかもしれません。
山陽には、このような大きなタイコが4個あり、最大同時に500枚(15トン以上)の原皮をなめすことができます。
主に、なめし剤「クロム鞣剤」、薬剤「柔軟剤」「防カビ剤」を使っています。
このようにしてタイコから上がってきた革は、薄い青色をしています。
その色から皮革業界ではこの革を「ウェットブルー」と呼んでいて、様々な姿になっていく革の元の形です。このウエットブルー革は、適度に水分を絞った後に、等級選別・一時保管されます。
ウェットブルー革の時点で、皮から革に変化しているのですが、そのまま使われる事は、ほとんどありません。これからカバン用や靴用など革の使用用途に応じて次の加工に移っていきます。
ここからは「厚さ調整」、「再なめし(中和・染色・加脂)」という加工が行われます。
「厚さ調整」はシェービング・マシーンという機器を使って、革の床面(裏面)を削りとり、使用用途に応じた厚さに加工します。
その後、「再なめし」という工程に入ります。ここで、革をもう一度なめし剤に浸けます。ここで使われるなめし剤では、「合成タンニン剤」「植物タンニン剤」などが使われる場合があり、「タンニン」が入る事で、「コンビネーションなめし」「コンビなめし」と呼ばれたりしています。(コンビネーションなめしについては、また別の機会に詳しくお話しさせて頂きたいと思います。)
また同時に革に色をつける染色や柔軟性を持たせる加脂(油脂を加える)という処理を行い、皆さんが使用している革に近づいてきます。
このように、クロムなめしは化学的な方法や材料を駆使して私たちの身の回りあるカバンや靴、財布また革ジャンのような衣服に使える革をたくさん作ることができる製法です。
クロムなめしが発明されたことで、私たちは皮革製品を身近なものとして利用でき、その結果生活を豊かなものしてくれていると感じます。
山陽では、このような技術をベースにより利便性の高い、機能性に優れた革の開発に取り組んでいます。
今後は優れた特徴を持った高機能革についてご紹介できればと思います。
それでは、また次回に。
関連記事:
クロムなめしとは(1)
なめし(鞣し)って何?
皮から革へ
CONTACT
革の製造をご依頼の方はこちらから。
その他、レザーにまつわる、さまざまな
お問い合わせを受け付けております。
メールでのお問い合わせ