山陽Letter
【山陽レザー】#006 アーマー(グローブひも用革) ~「切れない革」を目指して
革の世界
前回の「タンニンなめしとは(1)」では、革をなめす為の原料となる「タンニン」についてお話しました。(まだ読まれていない方は、よろしければこちらから「タンニンなめしとは(1)」をご覧ください。)
今回は、タンニンを使って革をなめし(鞣し)ていく製法についてお話しいたします。
「この革は植物のタンニンでなめした革なんですよ」という言葉を、革製品を販売しているお店や革素材を扱っているレザーショップの店員さん等から聞かれた事があるかもしれません。
確かに前回お話ししました“植物から抽出したタンニン”を使用してなめした革はすべて「植物タンニンなめし」と言われているのですが、なめす製法が大きく2つに分かれます。
それは、「ドラムによるなめし(ドラムなめし)」と「ピット槽によるなめし(ピット槽なめし)」です。
ドラム(またはタイコ)と言われる非常に大きなビール樽のような装置(写真)に原皮とタンニンなめし剤を入れ、回転させながら革にタンニンを浸透させていく方法です。
浸み込ませていくというよりは叩き込んでいくという感じで、ドラム式洗濯機の中に洗濯物と洗剤を入れて洗っていくようにイメージしてもらうといいかもしれません。
ドラムなめし製法の良いところは、比較的短時間でなめす事ができるため、製作コストを抑える事ができます。(1~2日間)
ピット槽と言われるプールのような「おけ」にタンニンなめし剤を入れ、濃度を調整した液を作り、その中に原皮を漬け込んで革にタンニンを浸透させていきます。
その間、ピット槽に漬けた原皮を適度に動かし続けて、原皮に負担をかけずに自然に染み込んでいくのを待ちます。
漬け込む期間は、季節や温度などでも変わりますが、約1ヶ月程度の時間が必要になり、“とても手間ひまが必要となる製法”です。
それではなぜピット槽なめしが行われるのかという理由は、ドラムなめしでは、なめし剤を短期間で染み込ませる為、革に様々な負担がかかり、ピット槽なめしと比較すると繊維のつまり具合が悪くなります。またタンニンの染み込み具合も変わるため革の経年変化にも影響してきます。
このように一言で「タンニンなめし」や「植物タンニンなめし」と言っても、このような製法の違いがあります。
さて、当社のタンニンなめしですが、「ピット槽なめし」で革を作っています。
ピット槽なめしは手間ひまがかかる為、日本でも数社程度しか行われていない、とても貴重な製作方法です。
※これまでに多くの工場見学もお受けしており、以下のWEBサイト・YouTube等でもご紹介して頂いています。
・No,No,Yes! Leather Tailor 様
ヌメ革ができるまで / ピット槽鞣し
〔No,No,Yes!様 公式サイト〕
ヌメ革ができるまで / 革の産地 姫路 / タンニン鞣し(ピット槽)育つ革
〔YouTube:No,No,Yes!様 公式チャンネル〕
また、ピット槽なめしで作られた革は、「きれいな経年変化」「コバなどの細部がきれいな仕上がり」になります。ですので、革製品を愛好されている方、レザークラフトを趣味にされている方には、ぜひ使って頂きたい革です。
山陽では、個人の方にも「タンニンなめし」革の直接販売を行っています。
山陽の革にご興味をお持ち頂けました方はこちらのメールフォームからご一報ください。
2回のシリーズで『タンニンなめしとは』をご紹介いたしました。
これからも当社の「タンニンなめし」革の特長についてご紹介したいと思います。
それでは、また次回に。
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