株式会社山陽

 

NOTE

クロムについて ~3価クロムと6価クロムの違いについて知ろう~

山陽の読み物(NOTE)をご覧いただきましてありがとうございます。
今日のテーマは、革を鞣す際に使う「クロム」についてお話を進めたいと思います。

私たちが使っている革の約80%は「クロム鞣し」という鞣し方法で作られた革と言われています。
その理由としては、革としての「強さ」や「しなやかさ」が最初に挙げられます。「引っ張りの強度」「難燃性」「柔らかさ」など私たちが革に求める性質に優れています。
またクロム以外の鞣し方法と比較して短時間で行えるといった利点があります。

このように広く鞣し剤として使われている「クロム」なのですが、クロムにもいくつかの種類があることはあまり知られていないように感じます。
今回はその違いについて、ぜひ知って頂ければと思います。

もともとクロムは、銀白色の金属です。鮮やかな光沢があり腐食しにくいという性質からクロムメッキの材料として使われています。あとステンレス鋼の材料に使われたりもしています。(鉄と10.5%以上のクロムを含ませた合金がステンレス鋼です。)
※下の写真はクロムメッキが施されたボトルとナットです。

このように私たちの暮らしにとって身近なものです。

クロムの大きな特徴として、酸素と結合しやすいという点があります。
酸素と結合することで酸化クロムというものになります。
さらに酸素と結びつく価数(酸化数)によっていくつかの種類が存在しています。
酸化クロム(II)、酸化クロム(III)、酸化クロム(IV)、酸化クロム(VI)などです。
この中で酸化クロム(III)のことを「3価クロム」酸化クロム(VI)のことを「6価クロム」と呼んでいます。

「クロムは人体に有害なもの」ということを聞かれたことがあるかもしれません。この原因は、クロムが酸化しやすいという特徴に起因しています。
特に6価クロムは不安定な物質で、通常自然界に存在することが少ないのです。そのため酸化して安定した形(3価クロム)になろうとします。この時の酸化作用が、人間の体内や体表で発生すると、「鼻中隔穿孔」という鼻の左右を隔てる鼻中隔に穴が空く症状や、肺がん、皮膚炎などの人体に悪影響を及ぼします。
対して3価クロムはとても安定した物質です。自然界の土中にも存在しており、微量ですが私たちの体内にも存在します。人間が活動するために必要な代謝に関わる必須栄養素の一つと言われています。(ビール酵母、レバー、エビ、未精製の穀類、豆類、キノコ類、黒胡椒などにクロムは多く含まれています。)
※3価クロムは、下の写真のように緑色をしています。それに対して6価クロムは赤茶色をしています。酸化数で色が変わるのもクロムの特徴です。

このようにクロム全てが、有害なものではありません。むしろ使い方を間違えずに活用することで、私たちにとって非常に有益なものと言えます。

私たち山陽の革づくりに使うクロムは、3価クロムです。
ですので、クロム鞣しの革が人体に有害という事はありません。安心してお使い頂ければと思います。

こういった点も踏まえた上で、山陽では「省クロム化」にも取り組んでいます。

山陽が省クロム化に取り組む理由は、大量のクロムを含む排水を出すことは水質汚染につながると考える為(※)、安定した3価クロムでも非常に高温で焼却されるなどの特殊な環境下では6価クロムに変わる恐れがある為などです。
(※)排水浄化処理においてもクロムの除去を行っています

現在では、かつてのクロム鞣し革に比べて、約半分の含有量までに抑えられています。
これからも皆様に安心・安全なレザーをお届けできるように努力してまいります。

今回は、革づくりに欠かせないクロムについてお話を進めてきました。
少しでもレザーの事を知って頂くことで、安心してお使いいただける一助になればと思います。

それでは、また次回に。


<参考サイト>
クロム(Wikipedia)
酸化クロム(Wikipedia)
酸化クロム(Ⅲ)(Wikipedia)
酸化クロム(Ⅳ)(Wikipedia)

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