山陽Letter
【山陽レザー】#005 サバナオイル/サバナワックス
革の世界
今回は、エンボスレザーについてお話しします。
エンボス(emboss)とは図柄や文字などを浮き出させる、浮き彫りにするという意味の英語です。
皮革以外の金属や紙などでも浮き彫りにする加工の事は「エンボス加工」と呼ばれています。(銀行のキャッシュカードでも名前や番号などが凹凸で刻印されたものをエンボスと呼んでいるそうです。)
このエンボス加工ですが日本語では「型押し」とも言われ、皮革業界では広く使われています。
革の種類にもよりますが、革表面にしっかりと圧力と熱を加えることで半永久的に凹凸ができるという性質があります。この性質を利用して人は様々な模様や文字などを革に施してきました。
広く使われるようになっている主な要因をご説明します。
まずは革の表面に様々な模様を映し出せるということでしょう。
エンボス加工をしていない革の表面は「平ら(スムース)」か「シワ感・シボ感」のいずれかです。(スムースの場合が大半ですが)
表面に模様を施すことで、スタイリッシュな印象になったり、エレガントな印象になったり、ナチュラルな印象になったりします。
表面に凹凸を与えるエンボス加工は、革製品になった時により立体感を出すことができます。
特に凹凸に合わせて、箔押し(凹の部分に金銀箔を入れる)や色付け(凸の部分に色を塗る)を行うことで、幅広い表現が出来ます。
例えば表面に小さなシボ模様の型を押すと、手との接触面にランダムな空間が出来ます。このことで、均一な表面と比べると、「さらっ」とした触感になります。
このような手触りの調整にも使われることがあります。
少し違和感がある表現かもしれませんが、エンボス加工では大きな圧力や高い温度を革の表面にかけて仕上げます。そのため表面に凹凸ができますが、革そのものはより平らに仕上がっています。このことは、革を製品に加工しやすくするという点でも利点だと考えられます。
革表面に圧力や熱をかけて模様をつけることで、革に元々ついていた「傷」「痛み」「シワ」などを目立たたなくするという効果もあります。
別の読み物で、革の「傷」「痛み」などは生き物の証であり、個性であることをご紹介しました。(こちらをご覧ください。)それは間違いないのですが、用途によっては工業製品のような均一性を必要とするものがあります。そのような場合に均一性を持たせる手法としても使われています。
また革は天然素材である故に等級の低いものも存在します。エンボス加工は等級の低い革も含めて全ての革を生かす手法でもあります。
代表的なエンボス加工に、「ワニ革風」「オーストリッチ革風」「トカゲ革風」などエキゾチックレザーなどの希少性の高い革を摸したものがあります。これらは生産数が少ない希少革の代わりとして活躍しています。近年は技術が向上し、私たちも一見だけでは見分けがつかないくらい精巧に加工されたものもあります。この技術により希少種の保全に役立っています。また本物の爬虫類革は、キズや不均一な部分が牛革よりも多い、もともと小さな動物であるために広い面積が取れないという問題がありますが、エンボスレザーではその点も解消します。
例えば「シボ」ですが、自然にできたシボは部位によってその粗さが違ってきます。背筋の部分は比較的シボの入り方は浅く、お腹の柔らかい部分は深いシボが入ります。
このようなランダム感を活かしたい革製品も魅力的ですが、製品によってはある程度の均一性が求められるものがあり、その時には「シボ」のエンボスレザーが適しています。
このように「エンボス加工」は革にとってなくてならない、そしてエコにも繋がる優れた技術です。
また当社が今年7月に開催した兵庫県豊岡市での展示会では、新作レザーとしてヌバック革にエンボス加工を行った革(商品名:ビルヌバック)を発表しました。(下写真)
通常は、スムースな革表面に施される事が多いのですが、起毛革であるヌバック革への革押しはより陰影を感じることができる、とても面白い仕上がりとなっています。
ぜひ皆さまの革製品に活かして頂ければ幸いです。
本日はここまで。
また次回に。
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