山陽Letter
【山陽レザー】#006 アーマー(グローブひも用革) ~「切れない革」を目指して
革の世界
前回の「革のキズについて考える①」は、天然皮革が元々生体の皮膚であったことから発生する原皮でのキズ等についてご説明しました。
今回は、「革」に仕上げた際に見られる傷等についてお話ししたいと思います。
前回の文末でも少しお話ししましたが、生き物であった以上「キズ」などの表皮の損傷が全くないということはありません。
当然ながら合成皮革、人工皮革では天然皮革のような損傷は発生しないので、それは正に天然皮革であるが故の「個性」とも言えます。
これは生体時の「他の牛との接触によるキズ」「掻き傷」「虫噛み傷」などが革になっても残ってしまったものです。(「革のキズについて考える①」でご紹介した原皮の傷の代表的なものがこれにあたります。)
私たちもそうですが生きている限り傷は付き物で、天然である証とも言えると思います。
<掻き傷>
<虫噛み傷>
血筋は血管の痕が革の表面に出ているものです。こちらも天然ならではの痕跡といえます。
個体によっては色濃く見えてしまう場合もありますが、生体時の活動量の多さを物語るとも言えます。
血筋は経年変化により、合成皮革などでは見られないような美しく変化するともいわれています。
またヨーロッパ圏では血筋が入っている革はナチュラルさをより感じられることで人気があるというお話も聞きます。
革の表面にトラ柄のような縞模様が出ているものです。
これは生体時のシワが模様として残ったものです。部位としては首や肩に多く見られます。
こちらも天然皮革に特有の模様で、天然の証といえます。
トラは革としての品質には問題は無く、むしろよく動かされていた箇所ですので、他の部位よりも柔軟性があり丈夫になるともいわれています。
個人的には、トラをアクセントとして活かされている革製品に魅力を感じます。
「トラ」も生きていた時のシワなのですが、トラが首筋のシワに対して、お腹周りのシワの事をタンナー(製革業者)では「生き皺(いきじわ)」と呼んでいます。
原皮やウェットブルー(青革)の段階では、あまり目立たないのですがタンニンを使って再鞣しを行うコンビネーション鞣し(コンビ鞣し)では、顕著に現れます。(下の写真のようになります。)
革の表面に現れる「皺(シワ)」は革の魅力を引き立たせてくれる大きな要素(個性)だと思います。また天然のシワではないですが、革に型を押したり、長時間(1~2日間)空打ち太鼓(ドラム)でアクションをかけるなどの加工を施してシワ感を出す「シボ」も革らしさを感じられるという事で人気の革です。
2回にわたって「革のキズ」、また天然の物であることからの個性についてお話してきました。
革製品が他の工業製品とともに日常的に使われる製品(靴、鞄、財布など)であるため、どうしても均一性という点で足りない部分に目が行きがちになってしまいます。
しかし一つ一つ違った個性を持っていて、革の事を知って頂くことで愛着がわく要素として捉えて頂けましたら幸いです。
本日は、ここまで。
また次回に。
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