山陽Letter
“本物” について考えてみる ~本革と言われるのはなぜ?
革の世界
以前に「ボックスカーフ ~革素材の最高峰~」という読み物(NOTE)で、グレージングという仕上げ方法で加工された高品質な革「ボックスカーフ」をご紹介しました。
(まだ読まれていない方は、よろしければこちらをご覧ください。)
その際に、ボックスカーフを作るためには、手間ひま、熟練した職人技が必要であり、たくさん作ることが難しいとお話しいたしました。実際にボックスカーフは、高価で手軽に使えるという素材ではありません。
そこでボックスカーフのような艶のある革を別の方法で作れないかという発想から出来た革があります。それが、「ガラスレザー」です。
今回は、「ガラスレザー」のご紹介をしたいと思います。
まず「ガラスレザー」が使われている代表的な革製品は、革靴、特にビジネスシューズです。革靴を思い描いて頂いて、表面が「ツルッ」「ピカッ」とした革がガラスレザーです。
この革には多くの利点があります。
なによりも「ピカッ」とした光沢感が一番の「売り」です。この光沢感を出すために以下の工程で製作されています。
表面の平滑性を高めるとともに、次工程の塗装をしやすくします。
革の表面を合成樹脂で塗装して、カバーリングを行います。
そのため、見た目が美しく仕上げられています。
※使用用途によって「マット調(つや消し)」に仕上げる事も可能です。
革の表面を合成樹脂でカバーリングしているので、キズが付きにくく強い革になっています。(専門的な用語では、耐摩耗性が高い素材になります。)
こちらも合成樹脂でのカバーリングの効果ですが、撥水効果があり、革の内部に水分が浸透することを防いでくれます。
「②キズが付きにくい」と「③水に強い」の両方を兼ね備えている為、メンテナンスが簡単です。まさにビジネスシーンで活躍する素材です。
ガラスレザーは、革の表面をバフィングして合成樹脂でカバーリングするという工程であるため、生体時についていたキズや汚れなども目立たなくなります。このため鞣し後の等級分けでは低い等級に位置づけられてしまった革であっても、問題なく活用することができます。
また革の部位についても全体的に平らに仕上げる事ができるので革製品として加工する際にもムダが出にくい革の一つです。
「ムダ」(活用できない部分)が少なくなることで、せっかく動物から頂いた命を可能な限り有効活用できる、「よりエコな素材」と言えます。
以上が大きな利点(メリット)です。
逆に残念な点(デメリット)は以下の通りです。
どうしても合成樹脂でカバーリングをするために、革の「銀面」の風合いは低下してしまいます。
革特有の性質である、「アメ色に変化する」ような経年変化(エイジング)は見られません。
ベースとなっている部分は、革本来の柔軟性、耐久性を持っていますが、表面を覆っている合成樹脂の層は、化学的な物質であるために時間や使用頻度と共に劣化やひび割れなどの破損が生じてきます。ただ近年では表面を覆う合成樹脂等も進化し、耐久力は向上してきています。また、当社では2万回以上の屈曲試験にクリアするなど物性テストをクリアした素材を提供するようになってきています。
いかがでしたでしょうか。
「天然素材の特性」に「人の知恵」を加えて、美しく、強く、そしてムダが少ない万人向け素材として生まれ変わった革であると感じます。
また、なぜ「ガラスレザー」呼ばれているのかですが、表面がガラスのようにピカッとしているからではないそうです。(私も最初はそのように思っていました。)
実は、この製法が発明された際に革を「ガラス板やホーロー加工した鉄板に張り付けて」乾燥していた為に「ガラス張り革」と呼ばれるようになり、現在では「ガラスレザー」という呼称が一般的になっています。
本日はここまで。
それでは、また次回に。
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