山陽Letter
【山陽レザー】#006 アーマー(グローブひも用革) ~「切れない革」を目指して
革の世界
こんにちは。
3月21日のWBC(World Baseball Classic2023)決勝で、日本がアメリカに勝利し、3回目の優勝を決めました。今回、ドラマティックなプレーや展開もあり、まだまだ興奮冷めやらぬという雰囲気を感じます。
また先週からプロ野球、メジャーリーグも開幕し、例年以上の盛り上がりを感じる今日この頃です。
今回は、この野球に欠かせない「グローブ」についてお話を進めていきたいと思います。
グローブは、皆さんもご存知の通り「革」で出来ています。その中でも、厚みがある牛革が主に使われています。
実はグローブに適した革として「グローブレザー」というものがあります。
これは、野球のグローブに求められる機能を備えた牛革です。それでは、この「グローブレザー」について詳しくお話ししていきましょう。
まず野球のグローブに求められる機能を考えた時に「耐久性があること」「弾力性があること」「柔軟性があること」が必要になると考えられます。
その為、特にプロおよび上級者用のグローブの素材となる「グローブレザー」の製作では以下の方法がとられます。
革の鞣し方法は、大きく「クロム鞣し」と「タンニン鞣し」の2つの方法がありますが、グローブレザーで用いられるのは「クロム鞣し」です。
これは、革の耐久性と柔軟性が両立する為です。クロム鞣しはタンニン鞣しに比べ、コラーゲン繊維同士を結び付ける作用が強く、かつタンニン鞣しの様に繊維のすき間に入り込むのではなく、部分的な結びつきを作る為、革としての耐久性を持ちながら屈曲などの力がかかっても割れたり破れたりという事が起こりにくくなっています。
(※ 鞣し方法は、プロ・上級者用も初心者用も同じです。)
プロ・上級者用のグローブレザーの大きな特徴として、革の内部まで浸透する染色「芯通し」を行いません。
グローブレザーの断面を見ると革の中心部分は白っぽいままになっていて、表面および少し内部までがオレンジ色になっている事が分かります。
これは、革の中心部にまで染料は浸透していない、表面部分だけの染色に留めているという事です。このような染め方を「半芯通し」と言います。
染料が中心まで浸透すると、革の繊維層がほぐれてしまい、弾力性や耐久性が損なわれてしまいかねません。そこで、表面の染色のみに留めているのです。
プロ・上級者用のグローブレザーの場合、表面に色をつける染色を行った後は、基本的に仕上げ処理は行っていません。他の革であれば、顔料による塗装やトップコーティングなどで、革を美しく見せる「お化粧」を行います。
しかし、グローブレザーは野球のボールを捕らえる為の物ですので、ボールをキャッチした際に滑りにくい仕上げにする必要があります。そのため必要最小限の表面加工しか行っていません。しかしその分、本来の革らしさを感じることができると共に、お手入れに使われるオイルの浸透性もよくなります。
革は表面に適度にオイルを塗ることで、耐久性や防水性が上がるという特徴もあります。それにメンテナンスすることで「自分の手に馴染む」「愛着が湧く」という感覚も実感できるのではないでしょうか。
このようにスポーツに求められる機能に応じて革も作り方が変わってきます。
山陽では、これまでも多くのグローブ用のレザーを作ってきました。
またグローブレザーを「グローブ」という用途だけにとどまらず、鞄や他の革製品にも応用して使ってみたい!というお客様にもご提供しています。
私自身もこの技術が、幅広く皆様の身近な革製品に応用されると良いと思っています。
本日は、ここまで。
また次回に。
グローブレザーを必要とされている方、ご興味のある方は「お問合せフォーム」からご連絡ください。ご相談からでも結構です。お待ちしています。
CONTACT
革の製造をご依頼の方はこちらから。
その他、レザーにまつわる、さまざまな
お問い合わせを受け付けております。
メールでのお問い合わせ