山陽Letter
【山陽レザー】#006 アーマー(グローブひも用革) ~「切れない革」を目指して
革の世界
前回の「革の部位」でも少しご紹介いたしました「半裁革」について、今回は詳しくお話していきたいと思います。
「半裁革」というのは、その名前の通り半分に裁った革のことを指します。
レザーショップや展示会などに行かれた事がある方は、大きな革を広げてみるとちょうど牛や馬、山羊などの動物を横から見たような形になっている革を見られた事があるのではないでしょうか。
まさに、一頭の動物の革を背中で半分に割った状態のものを「半裁革」と呼んでいます。
「なぜ半分に割るのでしょうか?」「どの工程で割るのでしょうか?」「すべての革が半裁革なのでしょうか?」そういった点をお話します。
革、特に大きな動物の革は、鞣しという加工を行っていく中であまりにも重すぎる、広すぎる状態での作業は非常に困難です。
成牛の革を例にすると、鞣し処理を行ってすぐの状態(水分を多量に含んでいる状態)での一頭分の重量は約30kg、大きさは500ds(5㎡)になります。
革を仕上げて行くまでには20を超える工程があり、そのほとんどが一枚一枚手作業で加工、運搬していくものです。
この重量や大きさでは大変困難になりますので、半分に割るという加工が導入されています。
まず動物が「皮」(原皮)の状態では、ほとんどすべてが一頭分の状態です。山陽に入荷される原皮も、一頭分の状態です。
原皮は、汚れや塩漬けの塩分を洗い流す「水洗い」の後、毛を取り除く「石灰漬け」という工程を経て、鞣しという加工を行います。この時点で「皮は革」になっています。
山陽では、一般的にタンニンなめし革は「脱灰」の後に、クロムなめしの革は「鞣し」の後に半裁革にします。
タンニンなめしの革を鞣し前に半裁革にする理由はタンニン鞣しを行う「ピット槽」に漬け込むためには半裁革の大きさにする必要があるためです。
対してクロム鞣しは大型のドラム(タイコとも呼ばれる)で回転させて鞣し処理を行うため、大きい状態で可能です。
(ただし、この点は各タンナー(製革業者)や革の鞣し工程の関係で変わります)
結論から言いますと、全てが半裁革というわけではありません。半裁にするのは大判の革のみです。牛革では、成牛の革(ステア、カウなど)や若牛の革(キップ)は半裁にしますが、子牛の革(カーフ)は通常半裁にはしません。また非常に大きな面積を必要とする革製品に使う場合は、あえて一頭分の状態で製造する場合もあります。
ちなみに半裁にしていない一頭分のままの革のことをタンナーでは、「丸革(まるかわ)」と呼んでいます。
やはり革製品に使いやすい大きさでご提供するという事が一番のルールですね。
このようにタンナーから出荷される革が半裁の状態であることから、レザーショップや展示会、即売会などでも半裁革として販売されています。
この半裁革は購入頂く製作者や職人の方にも良い点があります。前回もお話しました「部位」を革製品の製作者の方々が自由に選択して使えるということです。
例えば正面のできるだけ綺麗でしっかりした主要パーツであれば「ベンズ」(お尻部分の革)を使い、マチ部分には「ショルダー」を使うなどです。
また端の不規則な曲線部分を自分のセンスでうまく組み合わせてオンリーワンな一品物を作ることもできます。
四角にカットされた革では、そのような醍醐味は味わえないように思います。
ではまた次回に。
当社の革は通常、半裁革にて販売しています。
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