山陽Letter
【山陽レザー】#006 アーマー(グローブひも用革) ~「切れない革」を目指して
革の世界
この読み物(NOTE)を読んで頂いている方の中には「お料理を作るのが好き!」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
調理の腕が上がってくると「素材」にもこだわりたくなってくるものです。
「今日は柔らかいフィレ肉のステーキで」「明日はあっさりヘルシーにささみ肉を使って」などお肉の種類にもこだわって作るも楽しいですし、腕もさらに上達します。
革、とくに牛革では一枚の革の中でも「部位」によって違った“趣き”を持っています。
レザークラフトを趣味にされている方や革製品の愛好家の方にも、その違いを知って頂けましたらと思います。
動物の革も人間の肌と同様に場所によってきめ細やかさ、艶、ハリなどが違います。
大まかな傾向としては、“背中の部分は伸びにくく”、“お腹はたるみやすい”という傾向にあります。詳しくは以下の項目でご説明します。
部位それぞれの特徴を理解して、使いたいパーツに適した革を用意することで、より完成度の高い革製品ができます。
背中の後ろ半分からお尻にかけての部分です。
繊維の密度や厚みもあり、丈夫な部分です。良質な部分で大判が必要とされる製品から小物製品まで全ての用途に向いています。特に革の繊維方向が背中と水平に走っているためベルトなど細長く負荷がかかるパーツは優先的にこの部分を使う傾向があります。
タンナー(製革業者)でもこの部分を「主要部」と呼び、革の仕上がりの規準として最も大事にしている部分です。
背中中心から頭部に至るまでの「肩」にあたる部分です。
この部分は生体時によく動いていた部分であるため、柔軟性を持ちながら強度もある部分です。ただベンズに比べてシワになっている場合が多いです。
かばんを例にすると、マチの部分など柔軟性も必要で、かつ強度も必要な場合はこちらの部分を使うのが向いていると言えます。
お腹にあたる部分です。
この部分は繊維密度の間隔が広いために軽くて伸びやすい部位です。主要な部分のパーツには使いづらいですが、ポケットの見返しのような負荷があまりかからない場所や小さなパーツ、内側に使う裏地(裏革)等への使用には問題ありません。
レザークラフトをしているとどうしても端材になってしまう部分の一つですが、工夫次第で十分に有効活用できますよ。
頭、首にあたる部分です。
この部分もスジが多い、繊維密度の間隔が広い、厚さも一定になりにくい部位です。
ですがベリー同様に負荷のかからないパーツの利用であれば問題ありません。
面積も小さく形も不規則ですので、使いにくいという印象もありますが、自然にできた不規則な形をあえて製品作りに活かしてみるのも面白いかもしれません。
このように一枚の革の中にも、違った“趣き”や“特徴”があります。
人工的に作られた合成皮革や人工皮革のように全ての部分が均一にオールマイティーに使えるわけではありませんが、それぞれの用途に合った部分を使うことで質の良いオンリーワンな製品が出来上がります。
また、せっかく動物から頂いたものなので、可能な限り余すところなく有効に使いたいものです。
また別の機会には「半裁革」というものについてもご説明させて頂きたいと思います。
半裁革とは動物の革を半分に切った状態・大きさの革で、タンナーやレザーショップなどでは半裁革として販売されています。半裁革を入手することで、今日ご説明しました部位の革をご使用いただけます。
では、また次回に。
<参考資料:レザーソムリエ公式テキスト(日本革類卸売事業協同組合 発行)>
※レザーソムリエについてはこちらをご参照ください。
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