株式会社山陽

 

NOTE

革と熱の関係(2) ~熱による革の収縮~

山陽の読み物(NOTE)をご覧いただき、ありがとうございます。

「革と熱の関係」の2回目です。
前回は「革の耐熱温度はどれくらいか」「革は何度の熱まで耐えられるのか」という点についてご紹介しました。

今回は、耐熱温度以上の熱をかけると革はどうなってしまうのか?という点についてお話ししていきましょう。

結論から言いますと、「収縮」が発生します。つまり、高熱をかけられた革は「縮んで」しまいます。
ちょうど下の写真のようになってしまいます。

なぜこのようになってしまうのでしょうか?
一つは、皮革の主成分であるコラーゲンが変質する為と言われています。
熱をくわえられるとコラーゲンはゼラチンという別の物質に変わってしまいます。コラーゲン、ゼラチン両方ともタンパク質であり、アミノ酸というものから作られているのですが、それらは構造が異なっています。そのため、コラーゲンが固いゼラチンになる際に縮むいう現象が発生します。
タンパク質では、全般的にこのような性質があり、「お肉に熱を加えると固くなる」、「玉子に熱を加えると固まる」という現象は皆さんも日常的に目にされているのではないでしょうか。

またそれ以外にも革に内包する水分も大きく影響することがあるようです。
1回目のお話しでもお話ししましたが、革は濡れている状態での耐熱温度がクロム鞣し革で77~120℃、タンニン鞣し革で70~89℃であり、これを超えると熱による収縮がはじまります。ただし内包する水分量が少なくなることで耐熱温度は上がります。つまり乾いた革は熱に強くなっているのです。

ここまでお話を進めた中で、皆様にご注意いただきたいのは、「革は濡れた状態で温めてはいけない!」という事です。
1回目に革製品を作る際のアイロン掛けなど熱をかける加工方法についてお話ししていました。(まだお読みでない方は、こちらをご覧ください)
しかしスチームアイロンなど蒸気をかけながらの処置は避けた方が良いです。(個人的には、行わないようにして頂きたいです)
また濡れてしまった革製のカバンや靴、衣類などをドライヤーで乾かすといった行為も避けるべき事です。注意しましょう!

このように革は、高熱を加える事で収縮が発生するのですが、固くなるとともに“もろく”なってしまいます。それに一度収縮してしまった革は元の状態に戻すことはできません。
それだけに革に熱を加える際には、十分な注意が必要です。

さて、ここで疑問を持たれる、革に詳しい方がいらっしゃるかもしれません。
革の加工方法として「熱収縮」という技法があるのではと。

「熱収縮」とは、60℃程度に暖められた空打ちタイコの中で、長時間攪拌することにより革特有の「シボ感・シワ感」を出させる加工方法です。
熱を加えるという手法は同じなのですが、上記の熱による変質とは異なります。
革は、水を吸収すると膨張し、乾くと収縮するという性質があります。これは木綿などの生地でも発生する現象と同様と思って頂くと良いかもしれません。
この性質を応用し、熱を加えて水分の乾燥を急激に起こして縮ませる、このようにして作られた革が、「熱収縮シュリンク革」と呼ばれるものなのです。

以下の写真は、熱収縮で約20%縮ませたシュリンク革です。(第105回東京レザーフェア 極めのいち素材 に出品「SANYO SHRINK -DINOSAUR-」 詳しくはこちらをご覧ください)

この時に必要なのは、革のコラーゲンを損なわない温度をしっかりと意識しながら革本来の風合いをキープしつつ、シボ感を出していくことです。

革づくりは、芸術的な側面が取り上げられがちなのですが、もう一方で化学的な現象を基に理解・応用されている側面もあります。

私たちタンナーは、このような化学的な面にも着目し、より良いレザーを作っています。

次回は、熱に強い革、燃えにくい革という点に着目してお話しできればと思います。

本日は、ここまで。

また次回に。

■関連ページ

革と熱の関係(1) ~革の耐熱性について~

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