山陽Letter
靴磨き選手権大会 ~革靴にかける熱き戦い
革の世界
山陽の読み物(NOTE)をご覧いただき、ありがとうございます。
「革と熱の関係」の3回目です。
ここまで「革そのものの耐熱温度はどれくらいか」「耐熱温度を超える高熱に晒されると革はどうなるのか」といった点についてご紹介してきました。
今回は、熱への耐久性を上げる取り組みについてご紹介しましょう。
これまでの話で、革は熱に弱いのでは?という印象を持たれた方もいるかもしれません。
「熱による収縮」といった話を聞かれるとそのように感じるのも無理はないのですが、実は革は燃えにくく、古くは「火消しの防火着」に利用されていたのです。
また革(本革)の繊維層は、人工の繊維類と比べて非常に複雑な構造を持っています。
内側(内部側)から外側(真皮)に近づくほど徐々に密になるという密度のグラデーションがあり、外側の繊維が密になっている層では熱を防御し、内側の繊維が疎になっている部分は空気を取り込み熱を伝わりにくくするという仕組みになっています。
体を守るのに適した構造ですね。
私たちタンナー(製革業者)では、このような本来の革の特性に加えて、より一層の「燃えにくさ」を付加する取り組みを行っています。
山陽でも「難燃革」「耐火革」という分野に長く取り組んでいます。
幾つかの事例をご紹介します。
難燃革は炎の発生を抑制する効果を持たせた革です。
火災発生によって極めて甚大な被害となる可能性が高い乗り物のシート等へ使用するためにヨーロッパ圏から発生・進化した技術です。
山陽の難燃革は、「関西ラボラトリー」の燃焼試験(FMVSS水平燃焼試験)の規準をクリアしています。(試験についての詳細は、こちら(関西ラボラトリー株式会社WEBサイト)をご参照ください。)
ヌバック(起毛処理)の難燃革です。
ヌバック特有の手に吸い付くような感覚が特徴的な革です。
スムース以外でも難燃革への加工は可能です。
スムース革の難燃革です。
スムース革特有のさらりとした感覚が特徴的な革です。
乗り物シートに適した難燃革です。
難燃性以外にも「耐摩耗性」「耐光性」も兼ね備えています。
スタール・ジャパン(株)が日本に初めて輸入した新規高分子系鞣剤「グラノフィンF-90」を用いて製造した耐火革です。
2017年に現場レベルでの耐火試験を行い合格しました。この革は溶鉱炉用プロテクターに使用、(株)井上金属において採用されています。
他の有機系素材より燃えにくく、燃えても六価クロム等の有害物質が発生しにくいという特徴を有しています。
詳しくは、こちら(ピックル不要で鞣し可能な新規鞣剤で現場製造した耐火革:兵庫県立工業技術センターWEBサイト)をご覧ください。(※写真も許可を頂き、上記サイトから転載しております。2次利用はご遠慮頂きますようお願いいたします。)
革と熱という視点で、お話を進めてきました。
レザーが熱に対する対応力があること、そして現在もその利便性を高めるために日々改善が続けられています。
皆さまの身の回りにも、熱から守るために革が使われているものがあるのではないでしょうか。少し目線を広げて革製品を見てみると新たな発見があるかもしれませんね。
それでは、本日はここまで。
また次回に。
〔謝辞〕 今回のNote(読み物)記事の作成にあたりまして、兵庫県立工業技術センター 皮革工業技術支援センター 様のご協力を賜りました。誠にありがとうございました。
・兵庫県立工業技術センター 皮革工業技術支援センター 公式WEBサイト
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