山陽Letter
【山陽レザー】#006 アーマー(グローブひも用革) ~「切れない革」を目指して
革の世界
こんにちは。
山陽の読み物NOTEをご覧いただきましてありがとうございます。
久しぶりに、「革の世界」に関するお話を進めていきたいと思います。
カバンや財布、靴など、革を使って製品を作る際にとても重要になってくる事の一つに、「革の厚さ」があります。
革製品を作られている職人の方はもちろんの事、趣味で革細工をされている方であればその重要性をご理解いただけるかなと思います。
そして重要であると同時にとても難しいこともお判りいただけるのではないでしょうか。
そんな革の厚みの調整について、今回はシリーズでお伝えしていけたらと思います。
初回である今回は、概要として革の厚み調整にどんな段階があるのかをご説明していきましょう。
私たちタンナーが行っている革の厚さ調整の段階も含めると、皆さまが使われている革製品に適した厚さに至るまでに大きく5段階を経て目的の厚さになります。
①分割 ②シェービング ③裏漉き ④平漉き ⑤ヘリ漉き
このうち、一般的には①~③が、私たちタンナーおよび革漉きの専門業者にて行われている工程で、④・⑤は革製品の製作業者・製作者の方にて行われている工程です。
順を追ってみていきましょう。
こちらは原皮の段階での厚さ調節です。
原皮はとても厚い状態です。そのままで鞣してしまうと、重すぎて作業性が悪いといった問題があります。そして何より鞣し剤や薬剤が適切に浸透しにくいという課題が残ります。そのため、ある程度の薄さに均一に調整することで、鞣し剤や薬剤がムラなく浸透し、きれいに仕上げることができます。
その為、銀面側と床面側の2つの革に分割(スプリット)します。このようにして出来た銀面側が皆さんが目にされる「革」になり、床面側が「床革」になります。こちらで出来る床革も有効活用されています。床革については、詳しくはこちらの読み物をご覧ください。
この段階で、革として使われる大まかな厚さに調整されます。ここでは、まだどのような製品になるのかが未定ですので、厚目に調整しています。
こちらは仕上げ前段階の革での厚さ調整です。クロム鞣し革のウェットブルー(青革)に対して調整します。(※)
上の写真の装置に革を挟みこむことで、下側にある刃で革の裏の部分(床面)を削っていきます。(削り取られた部分は粉末状になります。)
シェービングの目的は、お客様のオーダーに応じた革の厚みの調整です。ただし、この後の乾燥や仕上げ塗装等の工程による変化も見越し、予想した厚みで調整します。そのため、仕上がり時に最終の厚みを確認し、必要に応じて次の「裏漉き」を行います。
(※)シェービングはタンニン鞣し革で行う事はありません。
その理由は、革の裏側(床面)を高速で鉄の刃で削り落とすという仕組みから、熱を持ち、鉄と頻繁に接触する為です。タンニン鞣し革は、乾いた無着色の「キナリ」という革がベース(素材革)となります。乾いた状態でシェービングを行うと摩擦熱でタンニン鞣し革は変色してしまいます。また刃の鉄粉とも化学反応を起こして変色を起こしてしまうことがあります。そのため、タンニン鞣し革はシェービングは行わず、次の裏漉きで厚みを整えています。
革が仕上がった後に、厚みを調整します。
裏漉きの仕組みは、「1.分割」と同様で、革の断面に刃(ブレード)を入れて、上下にスプリットしていきます。ここで、最終的にお客様のオーダーに応じた厚みになります。
裏漉きは、革の漉き加工を専門に行われている会社にお願いすることが多いです。
ここからは革製品を作られる方にて行われる工程です。
革製品のパーツによって最適な厚みに調整します。
各パーツごとに一定の厚みに調整していきます。こちらも「1.分割」と同じ仕組みで革が漉かれます。
一般的にバンドナイフと言われる平漉きができる機器で行います。
こちらも革製品を作られる方にて行われます。
革製品のパーツによっては、製品の断面にあたる部分を折ったり、2枚の革を重ねたりする加工が必要になります。
その際に必要以上の厚みが出ないように製品の断面にあたる部分(ヘリ)だけを薄くすることがあります。(全てではありません)
このヘリ漉きは、専用の革漉き機で行われる他、職人の方の手作業で行われることもあります。
いかがでしたでしょうか?
革製品の厚み調節だけでもこれだけの工程があります。
また、革製品の場合、厚みの調整が上手くいかないと、最終の製品になった時に使いにくい物となってしまうため、タンナー、職人様ともどもとても神経を使うところです。
皆さまがお使い頂いている革製品にもこういった工夫や苦労があることを知って頂けましたら幸いです。
では、また次回に。
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