株式会社山陽

 

NOTE

革のキズについて考える①

前回、革の等級についてのお話をしました。
(まだお読みになっていない方は、よろしければこちら〔革の等級〕をご覧ください。)

その際に、元々生体の皮膚であった天然皮革には、動物が生きていた時の傷がある事をご紹介しました。

当社の革は食肉牛の原皮から製造しています。野生の動物ではないのですが、やはり生体時に活動などによって以下のような傷が残ってしまいます。

1.他の牛との接触によるキズ

牛同士も時には“喧嘩”のように激しくぶつかり合う時があります。肉牛は一定の管理の下で成長しているので、野生動物のように多くはありませんが、他の牛との接触によって皮膚に傷が入りそれが革に残る場合があります。

2.掻き傷

私たちの業界では「スクラッチ」とも呼ばれるのですが、いわゆる引っ掻き傷です。
柵や壁に擦れる、または牛が擦り付けることによって生じる傷です。

3.ブランド傷

以前に放牧時に牛を識別するために焼き印「ブランド」を付けることがあることをお話ししました。この時の傷、いわゆる「ブランド傷」も天然皮革ゆえの傷の一つです。
(ブランド傷については、こちらもご覧ください)

4.虫噛み傷

牛の皮膚中に卵を産む虫がおり、その幼虫の成長時に皮膚が破られ傷が生じる場合があります。私たちの業界では「グラブ」と呼ばれています。

5.皮膚病や皮膚のただれ

牛が生きていた時に皮膚病に罹ってしまった場合や、お尻部分の皮膚に排泄物が長時間付着してしまった場合には皮膚のただれが発生することがあります。このような場合、傷というよりは全体的に革の銀面が取れてしまっているような状態になります。

6.血染み

原皮の取得時についた血液や、原皮内に残ってしまっていた血液が長時間付着してしまうことがあります。そのような時に皮の表面に血の染みが残ってしまう事があります。
私たちの業界では「ブラッドステイン」と呼んでいます。

7.原皮の保存時に生じる損傷

原皮は多量の塩で塩漬けしてから輸送され、各タンナーにて一時保管されます。山陽では入荷後すぐに低温の状態をキープして損傷を防ぐようにしていますが、時には微生物が損傷を与える場合があります。
その為、私たちは原皮の状態から出来るだけ早期に鞣し処理を行い、ウェットブルー革や生成革といった「仕上げ前のベースとなる革」にして保管しています。

 

このように、天然皮革は生き物から作られる素材であるため、様々な傷や損傷のリスクがあります。
しかし生産するという視点に立てば、「リスク」という表現になるのですが、見方を変えれば生を受けた「証」とも言えると思います。

次回は、「キズ=革の個性」というお話ができればと思います。

本日は、ここまで。

また次回に。

 

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