山陽Letter
【山陽レザー】#006 アーマー(グローブひも用革) ~「切れない革」を目指して
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山陽の読み物をお読みいただきましてありがとうございます。
今回は、シリーズ「社長に聞く」の3回目をお届けします。テーマは前回に引き続き「レザーとサステナブルの関係」です。
1回目、2回目の内容はいかがでしたでしょうか。3回目でこちらのテーマは完結します。
お楽しみください。
前回までは、革の元となる原皮についてお話を進めてきました。今回は革に加工する工程についてのお話をしたいと思います。
皮から革にする工程においても、加工を行うためのエネルギーは必要です。
このエネルギーとCO2発生の関連について2012年にJutta Knodler氏(I-T-G GmbH Environmental Technology)が発表した調査結果によると、食肉市場から出る原皮から革への加工において発生するCO2は、合成皮革、天然繊維、ポリエステルと比べてほとんど差が無かったとされています。
各素材を1m2の製造に係るCO2の平均排出量(kg) | |
---|---|
レザー | 17 |
ポリエステル | 17 |
綿 | 19 |
合成皮革 | 16 |
としますと、その違いは各素材の原材料が発生しているところになります。
革であれば原皮が発生する畜産業界。石油由来素材であれば石油採掘をしている石油産業界でのCO2の排出量の違いになります。
畜産業のCO2排出量については様々な報告がありますが、LHCA(Leather and Hide Council of America)がシンシナティ大学のLeather Research Laboratoryと協力して調査した内容によれば、先進国で飼育されているほとんどの牛は飼料を餌として与えられていますが、発展途上国などその他で多く飼育されている牛は牧草を食べています。人類は耕作面積(全陸地の1/3)の食糧生産不足を補うため、草を栄養源にできる反芻動物、牛を牧畜しています。そして畜産業では大気中で12年の期間をかけて牛から発生したCO2を草へと吸収される循環型産業出ることを報告しています。
一方、石油産業でのCO2排出量はどうでしょうか。地中から過去のCO2を大気へ排出する。カーボンニュートラルな視点から、革素材と石油由来素材を今一度とらえて、皆さんのなかでご判断頂けましたらと思います。
なお、上記のJutta Knodler氏の研究は、発表から約10年を経ております。現在の最先端の製革工場においては、革1m2を製造するのに排出されるCO2は1.1㎏という結果も出ており、製革工程でのCO2発生削減にも取り組まれてきていることも付け加えたいと思います。(WOLD LEATHER DECEMBER 2020/JANUARY 2021, Carbon figures show why hides must not go to waste)
そのご質問については、いいえと言わざるを得ません。
残念ながら、全世界中の牛の原皮のうち約半分(約45%)が廃棄されています。
その理由は様々ですが、そのうちの一つには原皮を製革業者へ引き渡していくサプライチェーンが確立していないという事や、合成皮革など石油由来素材と対抗できる均一的な素材として仕上げることが難しい原皮であるという事も聞き及んでいます。いずれにせよ勿体ない話であると感じます。
その上、今以上に「革離れ」が進んでしまうと、それだけ廃棄される原皮も増えていく結果となり、不安を禁じ得ません。
今回は、「レザーとサステナブルの関係」と題してお話ししてきました。3回を通してお読み頂きました皆様本当にありがとうございました。
レザーというものの基本的な点から今取り組まなければならないサスティナブルという点まで広くお話ししていったかと思いますが、その思いは以下の一文に集約されるかと思っています。
「レザーは命を活かす素材である」
命という、とても崇高で大切なものを扱うが故に、多くの方々の様々な意見や感じ方があるかと思いますが、私たちは「せっかく頂いた命をしっかりと活かしきる」という気持ちで日々の仕事に取り組んでいます。
そしてその結果、持続可能な社会を作る一助になることも、調査結果から示されています。
少しでも革の大切さに気付いて頂けましたら幸いです。
いかがでしたでしょうか。
今後も、シリーズ「社長に聞く」は継続していく予定です。次には別のテーマでお会いしましょう。
また戸田社長が発信するインスタグラム(https://www.instagram.com/sanyo_toda/)もご覧ください。
本日はここまで。
では、また次回に。
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