山陽Letter
“本物” について考えてみる ~本革と言われるのはなぜ?
山陽Letter
山陽の読み物をお読みいただきましてありがとうございます。
3回にかけて、シリーズ「社長に聞く」のVol.3「“レザー”を取り巻く環境」をお送りしています。
今回は最終回です。革そして新たな素材がある中で、私たちタンナーが何を思い、そして何を伝えるべきなのか。
「“レザー”を取り巻く環境」の3回目をお楽しみください。
これまで皮革業界を取り巻く「新しい技術」と「伝統的な技術」についてお話してきました。「新しい技術」とは、取りも直さず20世紀半ば以降に発明された合成皮革に始まる新素材の事です。また「伝統的な技術」とは私たち人間が文明というものを築き上げながら活用してきた革(レザー)の事です。
これらは生まれるべくして生まれたものと私は考えています。
私たちが作る革は、人類が数千年かけて技術を進化させ活用してきたものです。特にタンニンによる鞣しは当時の自然環境に合わせながら、やや緩やかに進化してきました。その後、増えていく需要に応える為に約150年前にクロム鞣しが発明され急速に技術革新や生産量が増えました。その背景には世界的な人口の増加、食生活の活発化とそれに伴う副産物の処理の必要性も革の生産増を後押ししたように思います。
そして第2次世界大戦後の世界となり、人口の更なる増加(人口爆発)やこれまでの人類が経験したことのない経済・産業活動の活発化による大量生産・大量消費社会。これらを背景に、さらに革の需要が大きくなったことによって、工業的な技術を駆使して大量かつ安価に革の需要を満たそうとする素材の登場。
その反動として環境破壊への反省と次世代の事に目を向けた環境配慮型の新素材開発への挑戦。
このように考えてくると新しい技術も伝統的な技術も、必然的に生まれてきたと考えられるのではないでしょうか。
私たちは、これまでには考えられないくらい便利な世の中に生きていると感じています。
しかし気をつけないといけないのは、これだけ多種多様で生み出されてきた経緯や時期が異なるものが横一線に存在するという時代に私たちは生きているという事だと思います。
伝統的製法のタンニン鞣し革、近代的製法のクロム鞣し革、合成皮革、人工皮革、植物系皮膜を持った新しい素材、植物系の繊維を活用した新しい素材などが横一線で私たちの前に並べられていて、私たちはどれでも選ぶことができます。
ともすれば、新しく開発されてきたものは、斬新で素晴らしい物として目に映るかもしれません。しかしこれまでお話ししてきましたように、それぞれの素材の特性は全く異なりますので、「必ずこれにしておけば問題ない」というものは存在しません。
私からのお願いなのですが、面倒かもしれませんが、ぜひそれぞれの特性を知り、見極める目を持って頂きたいのです。
私たちが作る革(本革)は、これまでお話ししてきましたように優れた特性をたくさん持っています。しかも、SDGsなどこれからのサステナブル社会の中で、革の最大の魅力である「長く使える」「使っていくうちに味が出る(経年変化)」といった点は、短期消費サイクルによる大量廃棄物問題解決への糸口になりますし、さらには他の新しい素材に比べて、購入時は高価ではありますが使用期間で考えるとコストパフォーマンスはどうなのかと言うことです。また、人類が生きるうえで必要とする食肉の副産物である皮を廃棄することなくアップサイクルした革(本革)こそサステナブルな天然素材ということも付け加えさせて頂きます。
ぜひ、皆さまには、それぞれの素材の特性を見極め、使われる目的や期間からの選択、地球環境やサステナブルな意識からの選択なども加味して頂ければと思います。その結果、新しい素材を使われることは、とても意味のあることだと思います。
ただ本革の良さも知って感じて頂きながら、本革の革製品を愛用して頂ければと思います。
私たちも引き続き、本革の魅了を知って頂ける、感じて頂ける活動も行っていきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
いかがでしたでしょうか。タンナーそして山陽の環境への取り組みについて少しでもご記憶に残りましたら幸いです。
シリーズ「社長に聞く」は継続していく予定です。また別のテーマでお会いしましょう。
本日はここまで。
では、また次回に。
CONTACT
革の製造をご依頼の方はこちらから。
その他、レザーにまつわる、さまざまな
お問い合わせを受け付けております。
メールでのお問い合わせ