山陽Letter
靴磨き選手権大会 ~革靴にかける熱き戦い
革の世界
今回は、山陽が作っている革の中でも最も機能性に優れている革の一つである「スクラッチタフレザー」をご紹介します。
身の回りの日用品や靴、衣類などは、どんなに気をつけていても使っていくうちに「キズ」がついてしまいます。使っている証ですし、特に革製品については自分が使っていく間についたキズが「味」にもなります。
ですが、やはりキズの無いキレイな状態で使い続けたいものです。
そういった思いから作られたのが、この「スクラッチタフレザー」です。
この革は、その名のとおり「スクラッチ(scratch:かき傷)」に「タフ(’tough:かたい)」な特性を持つレザーです。そして特筆すべき最大の特徴は、「自己修復能力を持つ」という事です。私も最初に「自己修復機能」と聞いた時に、「本当にそんなことが可能なの!?」と思ってしまいました。(まるでSFや魔法のような響きだったので)
しかしSFや魔法ではなく、実際に特殊な薬剤・工法を使うことで実現しています。
スクラッチタフレザーは、ほぼ最終段階まで仕上げたレザーに特殊なウレタン系の樹脂を塗布して、慎重に乾燥させています。(塗布する樹脂の粘度が高いため乾燥中にホコリ等が付着したり、不完全な乾燥状態で樹脂を塗布することで白濁が発生することがあります。)
完成した革を触ると少し手に吸い付くような感じがします。
爪やシャープペンシルの先のような尖ったもので革の表面をひっかくと、傷が付きにくいことに加えて軽いキズでればすぐに薄くなり元の状態に戻っていきました。残ったキズ跡も一日経つとほぼ気付かないくらいに元の状態に近くなりました。
(※ご注意:塗装が剝がれるような深いキズや、押し跡には効果はありません。)
またスクラッチタフレザーのもう一つの利点は、メンテナンスフリーである事です。
一般的な革であれば、使っていく中でクリームやオイルなどメンテナンス用品で手入れをしてあげる必要があるのですが、スクラッチタフレザーはクリームやオイルなどの必要はありません。(使ってしまうと反対に白濁を起こすなどのトラブルを起こす可能性があります。)
あと撥水機能も備えているので、防水スプレーの塗布も必要ありません。
このように物性としての完成度が高い革なので、ビジネスシューズのつま先部分やかかと部分など傷が入りやすい箇所に使われています。
※上の紳士靴では、つま先部分とかかと部分のみにスクラッチタフレザーが使用されています。その為にスクラッチタフレザー部分と一般的な革部分との差が出にくいように色・光沢感を揃えた加工にしています。また、こちらの靴は実際に当社 生産部長が長年愛用している靴です。
今回ご紹介しましたスクラッチタフレザー、いかがでしたでしょうか。
特殊な加工を要する革ですので、一般的な革よりも高価なものになるのですが、擦れやキズがつきやすい物にはぜひお試し頂ければと思います。
なお、『スクラッチタフレザー』は当社の登録商標(5636404号)です。
本日はここまで。
また次回に。
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