山陽Letter
【山陽レザー】#006 アーマー(グローブひも用革) ~「切れない革」を目指して
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こんにちは。山陽の読み物(NOTE)をご覧いただきましてありがとうございます。
今回は、2023年12月に開催されました第106回 東京レザーフェアで行われました革のコンテスト「極めのいち素材」で第1位に選んでいただきました『雪舟 –Sesshu−』について、開発するに至った誕生秘話をお届けしましょう。
※第106回 東京レザーフェア「極めのいち素材」の結果について、詳しくはこちらをご覧ください。
これまで山陽では、第104回から「極めのいち素材」に3回連続で出品していたのですが、残念ながら受賞には至っていませんでした。
そういった中で、「もっと斬新で革の可能性を感じてもらえるような、そんな革は出来ないものか」と展示会への企画を考える私たちは思っていました。
ちょうどその時に、「今まで“違う”と思っていた事をやってみたら、面白い革ができるんじゃないか?」と話してくれる染色を担当されている職歴40年のHさんが現れました。
「“違う”ことって何ですか?」
その言葉の真意を聞いてみると、「例えば、革の染色はムラなく一定の色に染めれるかという事を、ワシらは求められているけど、逆に染色タイコでムラが出るように染めてみたら面白いんじゃないかな?」とHさんはイタズラっ子のような笑顔で答えてくれました。
その瞬間に私も「それ、お願いします!」と答えていました。
それからHさんの思考錯誤が始まりました。
今まで“タブー”とされてきた事を敢えてやってもらうのですから、簡単でないことは容易に想像がつきましたが、さすがに40年のキャリア! 課題を一つひとつクリアしていきました。
まずは、革をムラにするには、タイコの回転速度やタイミングを一定にするのではなく「止める時間」を長く取るようにしました。
それ以外にも、直接革に染料があたるようにしました。(通常は、革が浸っているお湯に染料を流し込み革に直接あてるようなことはしません。)
タイコに入った染料はpH値が高い場合には活発に動き、低い場合には動きが抑えられます。その性質を応用してあえてpHを低くし、染料の流動を抑えて染料が入るところと入らないところを作りました。
などなど。
更に、この方法で表現できることが分かった後も、「綺麗」と感じられるような革に至るまでは、試作が続きました。累々と作られる試作品、色を変えて、タイミングを変えて様々なバリエーションが作られました。
その中で、「日本の水墨画みたいにシンプルにモノクロな革を作ったら面白いんじゃないか」というアイデアから作られたのが、今回の「雪舟」だったのですが。
その後も、試作は続きました。
ムラの発生は、その時の偶然のタイミングなのでHさんの納得ができるまで・・・
自身のイメージと偶然性との間で、「これなら行けるだろう」という感覚を得られたものが、極めのいち素材に出品した雪舟なのです。
この革を開発されたHさんは、『遊び心』という言葉をたびたび使われていました。
ちょっと違った事をやってみたい、冒険してみたい、という気持ちの表れだったのでしょう。
誰しもが、時には抱く気持ちではないでしょうか。私も共感できます!
今回、そんな職人の遊び心も含めて、皆様に評価頂けたのではないかなと、私も嬉しく感じています。
雪舟は、第107回 東京レザーフェア(2024年5月23~24日 都立産業貿易センター 台東館)で、もう一度展示して頂ける機会を得ました。ご参加された際には、ぜひ現物をご覧ください。
※第107回 東京レザーフェア に関して、詳しくはこちらをご覧ください。
次回は、後編としてサステナブルな視点からの「雪舟 開発秘話」をお届けします。
お楽しみに。
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