山陽Letter
靴磨き選手権大会 ~革靴にかける熱き戦い
革の世界
前回の「なめし(鞣し)って何?」では、大きく「タンニンなめし」と「クロムなめし」の2つ方法があることをお話しました。(まだ読まれていない方は、よろしければこちらから「なめし(鞣し)って何?」をご覧ください。)
今回は、「タンニンなめし」について詳しく説明していきます。
タンニンなめしには、植物の樹皮や幹、葉、実などに含まれるタンニンを使用します。タンニンとは柿やお茶の葉にも含まれるポリフェノールの一種で、様々な分野で活躍しています。皮革の分野では「タンニン」、木材工業の分野では「リグニン」、食品・医薬・化粧品の分野では「タンニン酸」、「カテキン」、「フラボノイド」、「ポリフェノール」と呼ばれています。
カテキンやフラボノイド、ポリフェノールというと聞いた事がある方も多いのではないでしょうか。
植物からとれるタンニンは、タンパク質と作用してゼラチン溶液を沈殿させる性質があります。
この性質が、動物の皮膚を構成するコラーゲン(タンパク質)に作用して「なめし」という変化を発生させています。また鉄と反応して表面に黒い酸化皮膜を作るという特徴もあります。
このような植物から取れるタンニンが革のなめしに有効である事を発見したきっかけは、昔、森の中の水溜りに、動物の死骸が漬かっていたことがあり、肉はすでに腐敗していましたが、皮だけは腐らずに残っていたという現象を発見した事だったと言われています。
それから経験的な革のなめしが行われていましたが、19世紀のイギリスで植物からタンニンの抽出・加工が始まりました。当時はオークからタンニンを抽出していましたが、タンニンの濃度が低く抽出に時間がかかるという問題があったため、よりタンニン分を多く含んだ植物から抽出されるようになりました。これらのタンニン剤を使用して現在のタンニンなめしが行われるようになりました。
タンニンなめしでは皮へのタンニン剤の浸透が遅いため負担をかけずじっくりと漬け込む必要があります。(通常、1ヶ月以上の時間がかかります。)
このようにして作られた革は、クロムなめしの革よりも固く、伸びや弾性が少ないという性質があります。しかし、使い込むごとに柔らかくしなやかになり、革本来の風合いを味わうことができることから愛好家の方も多いです。(私もタンニンなめしの革製品を好んで使っています。)
さて、タンニンなめしに使う植物タンニンは、それぞれ性質が異なります。そこで作りたい革によって使い分け、またはそれらを混合することによりなめしが行われます。
代表的なタンニンには以下のようなものがあります。
アカシア属植物です。その樹皮からタンニンは抽出され、平均35.0%の高いタンニン含有量がある点が特徴です。また、生育が早く、計画植林栽培にも適しています。現在では、南アフリカ、ブラジルで生産されています。殆どの植物タンニン鞣しに適した材料で良質な触感の良い革が得られます。
〔ミモザの花〕
ヨーロッパチェストナット、アメリカチェストナットとも呼ばれる植物で、イタリア・フランスに分布しています。木に含まれるタンニン量は平均11~14%です。底革やベルトなど、厚い革の鞣しによく利用されています。
皮に対する作用が早く、急速に硬い革が得られるのが特徴です。
ケブラコとも呼ばれ、南アメリカに分布しているケブラチョの木から抽出されます。主に幹の中心部にタンニンが含まれており、含有量は30~35%です。色は暗褐黒色をしています。
ミラボラムとも呼ばれる。インド・スリランカに分布するテルミナリア・チェブラ(ミロバランもしくはミラボラム)の木の実(くるみ状)の果肉から採取されるタンニンです。
ミロバランで鞣した革は、柔軟で淡い色の革が得られるのが特徴です。
ただし、しまりや堅さに欠けた特徴も持つので、ケブラチョやミモザと混合して利用される事が多いです。
山陽では、植物タンニン鞣しには、ミモザを使用する事が多いです。
〔ミモザ(粉末)〕
(※最初は液体状ですが、乾燥の工程を経て、貯蔵・輸送に適した着色粉末となったものを使用しています)
今日はここまでですが、続きは以下のページをご覧ください。
また以下の関連ページも革、特に「タンニンなめし」に関連している記事です。
ぜひご一読ください。
・タンニンなめしとは(2)
・今さら聞けない「ヌメ革」って何?
・なめし(鞣し)って何?
・皮から革へ
・3種の鞣し皮革
それでは、本日はここまで。
また次回に。
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