山陽Letter
“本物” について考えてみる ~本革と言われるのはなぜ?
革の世界
前回の「皮から革へ」で、動物の「皮(原皮)」から日常生活で使われている「革」に加工していく流れをご紹介しました。(まだ読まれていない方は、こちらから「皮から革へ」をご覧ください。)
その中でも、「なめし(鞣し)」という加工により動物の皮本来の強さを生かしながら、腐敗せず「柔らかさ」や「質感(手触り、ある程度の硬さなど)を持った「革」へと変化しますとご説明しました。
今回は、もう少し詳しく「なめし(鞣し)」についてご説明していきます。
生きている動物の皮はどのような構造を持っているのでしょうか。
動物の皮は、外部からの刺激や危害から体を守るため、繊維で織ったようになっており、驚くほど精巧で合理的かつ美しい構造をしています。以下は牛皮の断面構造で、表皮と真皮、皮下組織からなっています。
この中で、「真皮」の部分を革として利用しています。
なめしは、皮がもつ機能性を長く維持し、さらに改良するために行う科学的、機械的作業です。
具体的には、なめし剤という物を使って皮の主成分であるコラーゲンの微細な構造の間に「橋架け」を行います。
コラーゲンの構造中に新しい分子間結合を形成し、機械的作用により引き起こされるコラーゲンの変化と乾燥時に生じるコラーゲンの収縮を減少させるとともに、コラーゲンに耐熱性、耐薬品性、耐腐敗性、耐水性、柔軟性などの特質を与えます。
つまり、何もしないで放置しておくと腐敗したり、硬くなったりする「皮」に対して、腐敗の進行を止めて恒久的な強さや柔らかさ等を与えていくのです。
現在、なめしに使われる「なめし剤」の違いにより大きく2つの種類に分かれます。
それが、「タンニンなめし」と「クロムなめし」です。
古代エジプト時代より行われている最も古い方法と言われています。
植物の樹皮などより抽出したタンニン(渋)を主成分とするなめし剤を使います。古代の人々は、木や落ち葉から溶け出たタンニン(渋)に浸っていた動物の皮が「革」になっているのを、偶然に発見したのかもしれませんね。
このタンニンなめしには、良いところがたくさんあるのですが非常に手間と時間がかかる方法なのです。当社でもタンニンなめしの革を製作するには、「なめし剤(タンニン)」につける工程だけで1ヶ月以上かかります。
そのため大量の革が必要となった近代に、もう一つのなめし方法である「クロムなめし」が発明されました。
塩基性硫酸クロムという化学薬品をなめし剤に使用する方法で、1884年にアメリカで実用化された比較的新しい技術です。その背景には2度の世界大戦があり、軍用靴をはじめとする軍事用品のために、もっと早く多く作ることが出来て、もっと水に強く、伸縮性がある革ができないかというニーズに応えて発展していきました。現在作られている革の80~90%は、このクロムなめしで作られています。
次回は、タンニンなめしについて詳しくご紹介します。
<参考文献:一般社団法人 日本皮革産業連合会 『革のプロが教える、レザーの基本講座』>
関連記事:
タンニンなめしとは(1)・(2)
クロムなめしとは(1)・(2)
皮から革へ
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