山陽Letter
靴磨き選手権大会 ~革靴にかける熱き戦い
革の世界
さて3回シリーズでご紹介しました「起毛革」はいかがでしたでしょうか。
「3回で完了!」のはずだったのですが、もう一つご紹介したい革がありましたので「番外編」という事でご説明させて頂きます。
皆さんも起毛革の革製品を使われていて一つ疑問に思われることは無かったでしょうか。
「両面が起毛している革がある!でもヌバックのような触感ではない!これは何だろう?」と。
私自身も、ずっと疑問に思っていました。『この革』があることで起毛革がとても分かりにくいものになっていました。
この革の正体は、「床ベロア革」というものです。
以前に「床革」というものをご紹介しました。(まだお読みになられていない方はこちらからご覧ください)
分厚い革を上下に分割(スプリット)して表面(銀面が付いている側)と裏面(床面がついている側)が出来た革の内、裏面にあたる革。銀面を持たない両方の面が床になっているものでした。
「床ベロア革」とは、このようにして出来た「床革」を加工して作られた起毛革なのです。
床革の表面にあたる部分(銀面側になっていた側)にサンドペーパーをかけて起毛させた革が「床ベロア」です。
つまり床革の一種とも言えます。ですので、とてもサステナブルな素材ですし、触感なども良いためカバンや靴などに用いられているのを目にすることも多いと思います。もともと本革であるため耐久性があり、起毛されていることでキズも目立ち難く、クッション性もあります。そのため多用途で重宝されています。(私が使っているカジュアルバッグの底面にあたる部分にも使われていました。)
また、子牛などのきめの細かい革を使った「床スエード革」というものも存在します。「床ベロア革」のスエード版ですね。
このように起毛革の中にも、現在のように「サステナブル」が叫ばれる以前から全ての革を活かす工夫がなされていたことは、とても興味深く感じます。
それでは、これまでご紹介してきました起毛革をまとめてみたいと思います。
名称 | きめ・毛足 | 表面 | 裏面 |
---|---|---|---|
スエード | 細かい・短い | 床面をバフィング加工 | 銀面 |
ベロア | 粗い・長い | ||
ヌバック | 非常に細かい | 銀面をバフィング加工 | 床面 |
床スエード | 細かい・短い | 床革の外側にあたる面をバフィング加工 | 床面 (内側) |
床ベロア | 粗い・長い |
本日はここまで。
また次回に。
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