山陽Letter
【山陽レザー】#005 サバナオイル/サバナワックス
山陽Letter
こんにちは。
山陽の読み物(NOTE)をご覧いただきましてありがとうございます。
今回は、ひさびさの「工場見学レポ」。山陽とつながりのある企業様の現場をリポートする企画です。
ご紹介しますのは、「有限会社 コーヨープレス工業所」様です。(以降、「コーヨープレス様」)
コーヨープレス様は、革づくりにとって大切な「エンボス加工(型押し加工)」を専門に行われている会社です。
では、さっそくレポートしていきます。
山陽の読み物(NOTE)でも、「エンボスレザー(型押し革) ~革に表情を与える~」でご紹介しましたが、革を有効に活用するには無くてはならない技術です。(まだ読まれていない方は、こちらをご覧ください。)
表面が平滑なスムース革の魅力は言わずもがなですが、エンボスレザーにも革の魅力を引き立て、使いやすくする工夫があります。
大きくは以下のような点です。
・様々な表情を与える | ・立体感のある仕上がりになる |
・手触りを整える | ・立体感のある仕上がりになる |
・革表面の傷や痛みなどを目立たなくする | ・希少性の高い革の代用にもなる |
・均衡のとれた模様の革が使える |
このように重要なエンボス(型押し)技術。そこには、奥深く、他とは違った技術力が要求されるのです。
コーヨープレス様は、平成9年(1997年)に兵庫県姫路市野里地域にて創業されました。
私たち山陽の工場からも近く、革づくりで有名な姫路市高木地区からも自動車で10分程度と隣接しています。
さて、コーヨープレス様の工場に伺って最初に感じたのは、オープンな工場内には、多くのプレス機があり、皆さんが絶えず忙しく業務をこなされている姿でした。
下の写真のような機械(プレス機)を使って革にエンボス加工が施されます。
この機械の窓のようになった部分の上の部分に模様の元となる鉄板(原板)を設置し、原板の部分が下に移動することで中に入れられた革に型が押されていきます。
この時、圧力とともに熱もかけることで革に型が押されます。
プレスする時にかけられる圧力・温度は、革の内容によって微妙な調整が必要です。
革はそれぞれ、なめし方や仕上げ方が異なります。コーヨープレス様が加工する革は各タンナーからの加工依頼品ですので、細かな仕様はわかりません。その為、しっかりと革の特性や要望をタンナーに確認、加えてこれまでの経験から各タンナーの特色も加味しながら、適正な圧力の強さと温度を設定して加工されています。プレスを行うにあたって一番難しいのは、やはり『お客様のニーズに合わせる事』だとのこと。
革に対する詳しい知識と長年の経験、プレス機の特性を把握した上だからこそできる「職人芸」なのです。
こうしたタンナーを知り、ニーズに合わせようとされるからこそ、兵庫県内のタンナーの多くがコーヨープレス様の技術を信頼し、加工をお願いしています。(兵庫県は牛革の生産で、全国の7割のシェアを占めています。)
また、海外からも高く評価されており、イタリアのタンナーやプレス企業が視察された際に、「こちらのエンボス加工技術は、私たちと同じかそれ以上だ」とコメントされた事もあるそうです。
コーヨープレス様の「スゴさ」は、所有されている約1,000枚を誇る型押しの原板にもあります。
よく目にする「シボ型」、「ワニ型」からアーティスティックな柄まで、ありとあらゆる型を押すことが可能です。
ちなみに型押しの原板は、1枚約30~100kgもあります。業務中には、このように重い原板を頻繁に、そして短時間に取り換えられているのも印象的でした。
日本中でもこれだけの原板を所有されている企業は希少です。
そして、これだけの数の原板から選べるという事は、私たちタンナーの強い味方でもあります。デザイナー様や作家様は、常に新しい刺激を求められます。これだけのバリエーションがあることで、そのリクエストに応える事ができているのです。
今回の取材で私が発見した「スゴ技」が2つを最後にご紹介します。
1つ目が、「つなぎ目」です。
革に型を押す原板は革の大きさよりも小さい為、革全体にエンボス加工を施すには、場所を変えながら複数回プレスすることになり、その時に「つなぎ目」が発生します。
しかし、コーヨープレス様でプレスをされたものを見てみると、きちんと柄が連続するように押されています。少し位置がずれる、圧力が均一かからなかったといった微妙な事で、つなぎ目のズレは目立ってしまいます。これは決して簡単なことではなく、職人技なのです!
2つ目が、一枚の革の中に2種類・3種類の型を押すという「荒技」です。
通常、1つの革には、1つの柄の型押しが全面に押されるのですが、下の写真のように一つの革の中に柄を変えて違う種類の型を押されていました。
さらに表面にはAという柄を、裏面にはBという柄を押すという、さらに高度な技術も持たれているとか。当然、全ての革に可能というわけではないと思いますが、原板の種類や押す場所ごとの強さや圧力も工夫は素人では想像しきれません。
プレス専門企業ならでは、高度な技術を見せて頂きました。
コーヨープレス様では、今、若い社員の方の意見も取り入れながら、「オンリーワン」な企業を目指されているとのこと。
世界的にも評価される技術を磨き続けるとともに、「世界中でもここにしかない、ここでしか出来ない」オリジナルな技術や物づくりを将来に向けて作っていきたいという力強いお言葉をお聞きできました。
今回は、革にエンボス加工を専門的に行われているコーヨープレス様をご紹介しました。
私自身この取材を通じて感じたのは、革にエンボス加工を施すというのは、単に「型を押す」という単純作業では無いということです。
誤解を恐れずに例えると、「ハンコを押す」といった作業ではなく、「版画」や「浮世絵」のような芸術性を持つ創作活動に近いのではないかと感じました。
エンボス加工の専門技術については、私にとってここまで詳しく見て、感じることが無かった分野でした。今回の工場見学を通じて、皆様にも広くお伝えすることができ、本当に良かったと思います。
革づくりの奥深い世界を感じていただけましたら幸いでございます。
本日は、ここまで。
また次回に。
・今回ご紹介しました企業
有限会社 コーヨープレス工業所 住 所:〒670-0811 兵庫県姫路市野里951-87 電話番号:079-222-3116 FAX :079-223-5040 E-Mail :koyopress@ac.wakwak.com 創業年 :1997年(平成9年) 主な事業:皮革、合成繊維のプレス加工 |
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