山陽Letter
“本物” について考えてみる ~本革と言われるのはなぜ?
革の世界
今回の山陽の読み物(NOTE)をご覧いただき、ありがとうございます。
柔らかい革を作るには、どんな工程で、どんな工夫がされているのかをタンナー(製革業者)の視点でお話ししていこうと思います。
その第1回目は「バタ振り」という装置をつかった工程についてお話ししていきましょう。
バタ振りは、一般的という方法ではないのですが、そのインパクトから第1回目に持ってきてみました。
革は、動物の皮膚部分の複雑に絡み合ったコラーゲン(タンパク質)の繊維から成り立っています。
その繊維の複雑さや細かさにより、他の素材では出来ないような「しなやかさと堅さの両立」を有しています。
しかし、革にも布のような柔らかさが求められる場合があります。
例えば、革ジャンやレザージャケットのような衣類にする場合です。(これによく使われているのが、ガーメントレザーです ※ガーメントレザーについて詳しくは こちら<読み物「ガーメントレザー ~衣料に使う革~」> へ)
それ以外にも、ソフトな作りのカバンや家具の表面を覆ったりするなど、その需要は様々です。
そのためタンナーでは、いくつかの革を柔らかくする方法を使っています。
「バタ振り」では、下の写真のような装置を使います。
この装置は、本体の駆動部分から前に2本の「柱」が出ている形状で、その「柱」の先端に革を取り付けます。
そして動き始めると、革を付けた柱が高速で交互に上下運動を始めます。
まさに革を「ブン回している!」といった状態です。
その動きは迫力満点で、動かしている間は、半径3~4メートル以内が立ち入り禁止になります。
(わたしも初めてバタ振りが動いているのを見たときには、すごい迫力でロボットのようなカラクリ装置が動いているように見えました!)
革はこの装置で「振り回される」ことで、革内部の繊維間がほぐされて柔らかくなります。
他にも革をほぐす方法はあるのですが、このバタ振りが最も強力な方法で、約30分間行うだけで、革はかなりほぐれます。
ただし都合が悪い場合もあります。バタ振りは、1回の駆動に数枚しか行えないため、例えば100枚の革を処置する場合、革を数十回も付け替えながらの作業となります。
また革を掴んでいる部分に「つかみシワ」と呼ばれる型が残ってしまう場合がありますし、遠心力で外側の方に強く力がかかることで、均一性にほぐれないというデメリットもあります。
とはいえ、「少数を素早くほぐす」という点では、優れた装置です。
※個人的には、ダイナミックである意味かわいい動きをするバタ振りは気に入っています!
他にも、様々な方法を用いて皆様にソフトなレザーをお届けできるように工夫を重ねています。
それでは、本日はここまで。
また次回に。
【おまけ】
「バタ振り」は、英語でのタンナー用語でButterfly(バタフライ)と言われています。
そう!「蝶」です。革が動いている様子が、欧米の方には蝶の羽ばたきのように見えたのかもしれません。とてもロマンのあるネーミングだと私は感じました。
そこで、「バタ振り」の語源は、Butterflyが変化したものなのかを調べてみたのですが、残念ながら「バタバタ振る」から来た言葉だろうという事でした。そのまんまかい!
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