山陽Letter
【山陽レザー】#006 アーマー(グローブひも用革) ~「切れない革」を目指して
革の世界
山陽の読み物(NOTE)をご覧いただきましてありがとうございます。
革について様々なお話を紹介していますが、今回は革の兄弟関係(!?)とも言える素材「にかわ(膠)」についてお話ししたいと思います。
まず、「にかわ(膠)」って何? という方も多いのではないでしょうか?
しかし、その用途は広く私たちの身の回りにも膠を活用したものがあります。
膠は、一言で表現しますと「古来の接着剤」と言えるのではないかと思います。
紙や木等を瞬間的に接着することができます。例えば、マッチ、サンドペーパーなどの研磨紙、紙器(貼箱、事務用品、上製本など)、紙管(紙、布や繊維など巻き芯や郵送用の円筒)、仏具、家具、楽器などです。
また、和膠(※)と言われる日本伝統の製法で作られたものは、日本画や製墨に使われています。
(※)三千本膠、京上膠などの種類がある。主に棒状の形を持つ
膠の用途として特徴的なものとしては、日本画での使用ではないでしょうか。
日本画の絵具は、鉱物や貝などを砕いて粉状にしてあるもので、そのままでは粉が落ちてしまい絵は描けません。そこで紙に絵具を定着するのに使うのが膠です。
膠は、常温では固体ですが湯せんして熱を加える事で液体になり、冷えるとまた固体に戻るという性質があります。この性質を使って粉状の絵具を定着させています。
また個人的には楽器作りに使われている点に興味がわきました。バイオリンやギターなど、主に高級品で使われているそうです。私は趣味でギターを弾くのですが、ギターのブリッジ(駒)の部分やネック部分などの接着に使われていると言われています。
膠の原料は、動物の皮や骨などの部分です。これを水とともに加熱して作られます。その成分は、コラーゲンを母体とする有機たんぱく質です。
現在では牛の皮を原料とすることが多くなっています。そして、これがまさに皮革産業と密接につながっているのです。
皮から革にしていく工程では、原皮の裏面(毛が生えている面の逆側)をスライスし厚みを一定に保つ「分割」という作業を行います。(※詳しくは、読み物(Note)「皮から革へ」をご覧ください。)
分割の工程を経ると、本来の革として使う上側の部分と下側の「床」と呼ばれる部分に分かれます。この床は、ある程度の厚さのあるものは「床革」として利用されています。
(※詳しくは、読み物(Note)「床革~最もサステナブルなレザー」をご覧ください。)
しかし薄くて床革として使えない床は、膠などに活用されています。
ちなみに山陽がある兵庫県姫路市は日本有数の革の産地なのですが、膠の産地でもあり、日本の膠生産のほぼ100%は、ここ姫路市で行われています。
このように膠は、天然原料から出来ていて合成接着剤のような化学物質が発生しないという利点があります。加えて生分解性があり、『環境にやさしい』接着剤と言えると思います。
これまで「革」の特性として、「食肉の副産物」、「命を活かす」、「廃棄物の低減」といった事をご説明してきました。
このことは、同じ動物の皮からできている膠にも同じことが言えるのではないでしょうか。
また、革の生産段階で出来る「床」が活用されているという点では、とてもサステナブルなものであると思います。
このように考えてくると、人は元来、物を大切にしながら優れた文化をも発展させるという事を、本当に『自然に』行って来たのだと感じます。
今、私たちは「サステナブル」や「SDGs」といった意識を高めつつ、これからもずっと続く住みよい世界を作ろうとしていますが、いつかそれが『自然に』出来ている世界になっていれば良いなという気持ちになりました。
それでは、本日はここまで
また次回に。
・姫路の地場産業 電子じばさん館 WEBサイト
http://himeji.jibasan.jp/gelatin/4.html
・公益財団法人 兵庫・西はりま地場産業センター
https://www.jibasan.or.jp/jibasan/gelatin.html
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