山陽の読み物(NOTE)をご覧いただきましてありがとうございます。
「革をやわらかく」と題して、私たちタンナー(製革業者)がソフトな革を作る際に行う工程についてお話をしています。前回の1回目では、「バタ振り」についてご紹介しました。(お読みになられていない方は、
こちら「革を柔らかく(1) ~バタ振り編~」をご覧ください)
第2回目の今回は「空打ちタイコ」についてお話を進めて行きましょう。
空打ちタイコとは、その名前のとおりタイコの中に、基本的に革のみを入れて撹拌するという工程です。
これまでの「読み物」では、タイコの役割として「なめし※」、「染色・加脂」に使用する設備として紹介してきました。(※ 山陽では主にクロムなめしの際に使用しています。)
実はタイコには、もう一つの用途があったわけです。(タイコの基本的な役割は撹拌するということですので、かき混ぜることについては、多くの用途に使えるわけです。)
空打ちタイコで、革を柔らかくする為に要する時間は、約1〜2日です。
タイコに入れられた革は、ドラム式洗濯機に入れられた洗濯物のようにかき混ぜられます。
バタ振りとの大きな違いは、「ややソフトに全体的にテンションがかかる」という点です。
バタ振りでの30分の処理は、空打ちタイコの半日〜1日に相当します。
それでは、なぜ時間のかかる方法をとっているのでしょうか。それは、先程もご紹介しました「全体的に」という点に起因しています。
バタ振りは、急速な柔軟化を行える反面、革を掴んでいる所からの距離によってその効果にばらつきがありました。
それに対して空打ちタイコでは、革はほぼ均等にかき混ぜられるので、バタ振りのような「ばらつき」が生じにくいのです。
またバタ振りが1回の処理で数枚単位だったのに対して、空打ちタイコでは、数十枚ごとの処理が可能です。
加えて革の繊維が持つ自然な方向で縮みをつくりながら柔軟性を高めていきます。
このようにそれぞれの違いを認識しつつ革の柔軟性を高めて行くのですが、実際には、『バタ振り+空打ちタイコ』という処理も多く行われています。
バタ振りを行って急激に柔軟性を高めた後、後半では全体的な柔らかさで整えて行くといった感じです。
※ 空打ちタイコで革を撹拌する工程を「ミーリング」といいます。もしかしたら皆様も、革にシボ(シワ感)を付加するという処置として耳にされたことがあるかもしれませんね。
このように革を柔らかくすると一言で表現してみても、いくつかの方法がありそれらを選択・併用しながら、皆様のオーダーにベストな方法で仕上げています。
それでは、本日はここまで。
また次回に。