山陽Letter
“本物” について考えてみる ~本革と言われるのはなぜ?
革の世界
山陽の読み物(NOTE)をご覧いただきまして、ありがとうございます。
これまでにも、この読み物で革の鞣しの事は、何度か取り上げてきました
今回は、応用編という位置づけで、これまで説明した内容から一歩進んだ「鞣しの知識」についてお話ししていきましょう。
〔鞣しの基本的なことについて、まずは基本的なことについてお知りになりたい方は、こちらをご覧ください〕
革は、動物の皮を加工したものであることは、皆様もご存じのことと思います。
動物の皮には下の図のように真皮の部分は、「乳頭層」と「網状層」に分かれています。
さらにその構造は、複雑な組織構造を持っているのです。
その構造とは、内側から外側になるにつれて、繊維層が密になっているのです。
つまり表皮に近いところは、人の目では固体であるかのように詰まった状態になっています。
このような構造になっていることで、外側からの衝撃や熱・寒さを防ぎつつ、内側の「すき間がある繊維層」が、クッションの役割をするという動物にとって適した防御構造となっているのです。
人が最初に鞣された革を使った用途は、「服」ではないかと言われています。
上でお話ししたような優れた繊維構造を持っている為、寒さが厳しいときの防寒具として使われていたのではないでしょうか。
しかし、生のままの「皮」は、放置しておくと腐敗したり、固くなったりして、革製品のような用途には使えません。
その様子は、以下のような、コラーゲン繊維の分解と理解していただくとわかりやすいと思います。
このような分解を起こさせないための化学変化が、「なめし」と呼ばれているものなのです。
鞣しには、「架橋(かきょう)」と「充填(じゅうてん)」という大きく2つの化学変化があります。
文字通り「橋を架ける」ような化学変化で、既存のコラーゲン繊維どうしを、鞣しによってつくられた「新たな結合」がつなぎとめます。これにより、コラーゲン繊維の分解を防いでいるというわけです。
上で説明した「架橋」が直接繊維どうしを、くっつけるような変化であることに対して、充填は、鞣し剤がもともとある繊維のすき間を埋めていくというようなイメージです。
これにより密になり、腐敗から守られていきます。
「架橋」と「充填」が鞣しのしくみなのですが、私たちタンナーが行っている「タンニン鞣し」「クロム鞣し」の風合いの差は、実はこの鞣しのしくみに起因しています。
タンニン鞣しでは、「架橋」に比べて「充填」の効果の方がとても強いのです。
つまり、直接に繊維どうしがつながるよりも、すき間が埋められて革になっているのです。(架橋が全く行われていないのではなく、僅かといったイメージです。)
このため、堅く堅牢な特性を持ち、重量や厚みがあるしっかりした風合いを持ちます。その反面、曲げに弱く弾力性も少ないです。革が持つ物性という点では、クロム鞣しの方が優れていると言われる所以です。
しかし弾力性が少ないことは、型押しや刻印打ち、カービングといった圧力を加える加工が入りやすいという利点にもつながります。
クロム鞣しでは、「架橋」の効果が強く、「充填」の効果は弱いです。その為、繊維間のすき間が、がっちりと詰まることない状態で革になっています。加えて、クロムの架橋効果はとても強力な結合が間隔をあけて行われているといったイメージです。
その為、クロム鞣し革は、柔らかくて伸びる感触をもっています。それにタンニン鞣し革と比べて、軽く、物性にも優れているという性質があります。
その反面、型押しや刻印は、タンニン鞣し革に比べて入りにくい傾向にあります。
いかがでしたでしょうか。
今回は、鞣しの2つの効果「架橋」と「充填」というところから鞣しを捉えてみました。
「鞣し」の奥深いしくみについてご理解頂き、革の世界に興味を持っていただけましたら幸いです。
それでは、本日はここまで。
また次回に。
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