山陽Letter
“本物” について考えてみる ~本革と言われるのはなぜ?
革の世界
今回は、シュリンクレザーについてお話してみたいと思います。
革の世界では頻繁に使われている「シュリンク」という言葉、なんとなく分かるけど改めて言われるとどういうもの?という方も多いのではないでしょうか?少し突っ込んだ話になるかもしれませんが、ぜひこの読み物で知って頂ければと思います。
まずシュリンクレザーの特徴は、革の表面にデコボコとした模様(シボ)が出ていることです。カバンや革ジャンなどによく使われていて、革の風合いを感じることが出来ます。皆さんの身の回りにもシュリンクレザーの革製品が多くあるかもしれませんね。
このシュリンクレザーの「シュリンク」という言葉は、英語の「縮む」を意味する「Shrink(シュリンク)」から来ています。シボ感を出す為に革の表面を収縮させるという加工をしていた為、このように呼ばれるようになったのではないかと思われます。
シュリンクレザーの作る方法には大きく以下の2つの方法が使われます。
革の断面を見てみると「銀面層」と「網状層」という2つの層から成っています。タンニンにより革が鞣された際に、濃いタンニン液に漬けるとこれら2層の繊維組織の違いにより銀面のみに収縮作用が起こります。そこで革の表面にちりめん状にギュッと寄った独特のシワが出来て、私たちが良く目にする「シボ」が現れてきます。
この効果は植物のタンニンはもちろん、人工的に作られた合成タンニンでも現れます。
タンニン鞣しによる方法に近いのですが、最近ではより風合いの良いシュリンクレザーに仕上げるために特殊な薬剤(収縮剤)を用いて作られるようにもなってきています。
このように作られるシュリンクレザーですが、最近では別の方法で「シボ感」を出しているレザーも作られるようになってきています。
※その為、本来の作ら方で作られているシュリンクレザーを「本シュリンクレザー」と呼ばれる場合があります。
以前にエンボスレザーのお話をしたことがあるのですが、この方法を応用します。(まだお読みなっていない方はこちらをご覧ください。)
これは、シュリンク柄の凹凸が入った型を押しあてて、圧力と熱で人工的にシュリンク柄を施します。希望する細かさ(粗さ)のシュリンクレザーを作ることが出来ます。
革をほぐしていくことで、シュリンクタイプのレザーとして仕上げていく方法です。(フロータータイプ・レザーとも呼ばれています。)
これは、ほぼ最終段階まで仕上げた革だけをタイコ(ドラム)の中に入れ、長時間かき混ぜます。これにより革の表面に自然なシボが現れます。この方法を「空打ち」と呼んでいます。(当社では、空打ちを行う専用の「空打ちタイコ」があります。)
また革をほぐす方法として、革のバタバタと振り回すという方法も取られます。当社ではこの方法を「バタ振り」と呼んでいます。
このように、シボ感を感じることができる革は人気があり、様々な方法で作られるようになってきています。
その用途としては、「型押しによるシュリンク柄のレザー」は部位による差が無い、均一なシボ感が得られるという特徴があり、革製品にした際に整った表面にしたいという場合に使われています。
「タンニン鞣しによるシュリンクレザー」、「薬品によるシュリンクレザー」、「空打ちによるシュリンクタイプのレザー」では部位によって不均一なシボ(イレギュラーシュリンク)が現れます。イレギュラーシュリンクは、自然に発生したシボですのでその風合いが独特(唯一無二)で、これを愛好される方も多いです。また柔らかな触感を持ち、自然なシュリンクが出ている革を使って作られた革製品は、高級感を醸し出してくれます。
皆さんも多くのシュリンクレザーに触れて頂き、お気に入りの素材を見つけて頂ければと思います。
山陽も、これまでに上げました全ての方法により、お客様のご要望に応じた様々なシュリンクレザーを作っています。
また当社オリジナルのシュリンクレザーの一つである「SANYO SHRINK ™」は、最も権威ある国際的な革の展示会の一つとされるAPLF(アジア・パシフィック・レザー・フェア)にて2017年の最高賞(Best of APLF Awards 2017)を受賞しました。
※詳しくはこちら「日本の革は、世界の革に。SANYO SHRINK™」をご覧ください。
ぜひ当社のシュリンクレザーも、触れて使って頂けましたら幸いです。
本日はここまで。
また次回に。
山陽のシュリンクレザーにご興味を持っていただきました方は、お問合せページからご連絡ください。「サンプル革を見せてほしい」「まずは、少数(2枚程度)を使ってみたい」というお話からでも問題ありません。革製品を作られている企業様はもとより、工房の職人の皆様、個人の方からご注文にもお受けしています。ご連絡をお待ちしています。
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