山陽Letter
【山陽レザー】#006 アーマー(グローブひも用革) ~「切れない革」を目指して
革の世界
こんにちは。
山陽の読み物(NOTE)をご覧いただきましてありがとうございます。
以前に「革の厚さを調整する」と題して、革の厚さを調整する段階・方法、そしてタンナーならではの厚さ調整の設備(シェービング)について、お話ししてきました。
(まだ、お読みでない方は、こちら<『革の厚さを調整する Vo.1 ~革の厚さはどうやって整えているの?~』、『革の厚さを調整する Vo.2 ~シェービング~』>からご覧ください。
お話を読まれた方の中には、「そもそも革の厚みはどれくらいなの?」「どれくらいに調整すれば良いの?」と思われた方が多いかと思います。
私自身もワークショップや趣味などで革製品を作ることがあるのですが、いつも試行錯誤しながら調整しています。
そのような中での体験やタンナーとして扱う革の知識から「革の厚みはどれくらいなのか?」「どれくらいに調整するのか?」という命題を考えてみたいと思います。
ですので、今回の内容は一つの考え方や経験であり、全ての場合に当てはまらないという事は、あらかじめご了承をお願いします。
まず牛革の原皮の厚さというのはどれくらいなのでしょうか?
原皮は皆さんが目にされる『革』よりも品種や飼育環境、個体による差が大きいので、山陽で扱った一例としてご紹介します。
成牛(ステアハイド)の場合は20mm程度、若牛(キップ)の場合は、10~15mm程度でした。
原皮は内側の面に多くの脂肪分(脂肪の層)や繊維質が付いているため、実際の「革」よりも厚くなっていることが分かります。
内側の余分な脂肪分や繊維質は、フレッシング(裏打ち)という工程で取り除かれます。
鞣し前に分割(ベルトナイフ)という工程で厚さを調整します。この時の厚みは以下のようになります。
クロム鞣しを行う牛革の一例でご紹介します。
成牛(ステアハイド)の場合は、4mm程度。若牛(キップ)の場合は、3.5~3.8mm程度です。
この時の厚みは、皆さまが想像される厚みよりも分厚くなっていますね。
実は、分割(ベルトナイフ)前の段階には、石灰を使って「脱毛」を行う工程があり、その際に皮は膨張しています。そこで膨張している分を想定して分厚くなっています。
※分割での厚みは、タンナーごとにも異なりますし、最終的な革の厚みによっても異なります。(薄めの革を主製品とされる場合は、上記より薄くされることがあります。)
山陽では、一般的に成牛(ステアハイド)の場合は2.5~4mm程度、若牛(キップ)の場合は2mm程度です。
山陽では、一般的に成牛(ステアハイド)の場合は3mm程度、若牛(キップ)の場合は1.8mm程度です。
先にお話ししました鞣し前と比べると、かなり薄くなっています。
鞣される前後では、厚さは約6割になると言われています。
これまでお話ししましたように、原皮と鞣し後の革ではとても薄くなっている事をお分かりいただけると思います。
つまり原皮の約5割の部分は、皆さんが目にされる「革」にはなっていません。
フレッシング(裏打ち)で削られた部分は、製薬・化粧品・工業的な用途のコラーゲンとして使われています。
また分割(ベルトナイフ)で漉かれた部分は、床革となります。(床革については、詳しくはこちらをご覧ください)
ここまでが、『革』となるまでの厚みの変化です。
いかがでしたでしょうか。
続きは、次回にご紹介します。
また次回に。
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