株式会社山陽

 

NOTE

革とオイルの関係 ~オイルレザー~

こんにちは。

山陽の読み物(NOTE)をご覧いただきましてありがとうございます。
今回は「革とオイルの関係」と題しまして、革づくりに欠かせない材料である油脂分「オイルやワックス」についてお話を進めてみようと思います。

『革とオイル』といえば、真っ先に連想されるのが「オイルレザー」(オイルドレザーと言われることもあります)だと思います。
これは革に対して多量のオイルを含ませた革のことを指した言葉ですが、ほとんどの革は多少なりともオイルを含ませて仕上げられます。

その理由は大きく2つ挙げられます。一つは、革自体が乾ききってしまうと繊維組織の劣化を早めてしまうため。もう一つは無加工の革は水を良く吸うのですが、そのことがシミやカビの発生につながったりする為です。

革にオイルを含ませることで、「防水性が上がる」「柔軟性が上がる(柔らかくなる)」という効果があります。
革はもともと動物の皮膚の部分からできているので、油脂との相性は良いのでしょう。

では、どのような方法で革にオイル(油脂分)を含ませているのでしょうか?
私たちタンナーで鞣した直後の革にオイルを加えていく過程をご紹介しましょう。

〔ただし、こちらの方法は山陽にて行われている一例です。すべての革が同じ方法で作られているというわけではありませんので、予めご理解ください。〕

1.タイコ(ドラム)による油入れ

ウェットブルー(クロム鞣し革)、キナリ革(タンニン鞣し革)のように鞣した直後の革に対して、最初に行われる油入れは、タイコ(又はドラムとも呼ばれます)で行われています。
「皮から革が作られる過程」で言いますと、『染色』が行われる段階です。(詳しくは、こちらのページもご覧ください。)

ここでは、タイコと呼ばれる革用の撹拌機(ドラム型洗濯機のような構造を持つもの)で革の中に油脂分を含侵させていきます。

革と油分がかき混ぜられることで浸透させていきます。タイコを使った油入れでは、革の内部にまで油脂が入り込みます。このことで、革の内部に水が浸透しにくい防水性や革全体の耐久性がアップします。

この段階での油入れは、ほぼすべての革に対して行われていると言ってもいいでしょう。
それだけ重要な工程です。

ただし、ここでの油入れだけでは、皆さんが目にされるオイルレザーのようなしっとり感は出ていません。どちらかというと「ベース(基礎部分)を作った」という感じでしょうか。

また一般的にこの段階で使われるのは粘度の低い液体性のオイルです。

2.オイルコーターによる油入れ

こちらでは、革の表面に油脂分を塗布して、革の中に浸透させていきます。

革をオイルコーターと呼ばれる装置のコンベア部分に一枚ずつ載せていくことで革の表面に油脂分が塗布されていきます。

ここでの油脂分は革の表面近くの層で留まるので、タッチ感(触感)に大きく影響します。具体的には、しっとりした感触になります。

タイコでの油入れと違い、常温では固形となるワックスの塗布もできることが大きな特徴です。

当社でも人気の高いQHワックス(ハーヴィー)のようなワックス系の革はこのような仕組みで作られています。塗布されたワックスは表層近くに留まり、プルアップ感も十分に楽しむことが出来ます。(プルアップについては、こちらをご覧ください。)

また表面にもオイルが塗布されることで撥水効果も得られ、水への耐久性が向上するとともに、革に柔らかさ・しなやかさを加えます。

 

このように山陽では大きく2つの方法を使い、オイルレザーを作っています。

図にすると以下のようになります。

これらのいずれか、もしくは両方を使い、様々なオイルを組み合わせることで皆様のオーダーに応じた革を作っています。

革とオイルの関係、いかがでしたでしょうか。
革製品づくりや革製品のお手入れなど、何かにお役に立てましたら幸いです。

それでは、また次回に。

追記

時間の経過や使用状況などで、もともと革の中に含有していた油脂分が抜けていってしまうと、革へのダメージが付きやすくなります。そこで、クリームやオイルなどで補ってあげることで、革製品の寿命も延びます。

 

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